バージンバイク
キャラクター&歴史

25周年を迎えたビューエル
アメリカンスポーツの真髄を知る

「ビューエル」という名のスポーツバイクがある。その名を聞いたことがある人は多いだろうが、実際に乗ったことがある人はどれほどいるのだろう。かつてハーレーダビッドソン社に勤務していたエリック・ビューエルが、1986年に設立したのがビューエルのはじまり。ハーレー製のXRエンジンを使用したオリジナルマシンを開発し、翌87年には“ルシファーズハンマーU”と名づけられたマシンでレースに参戦、名もないメーカーながらツインモデルだけで争われるレースで優勝という成績を収めている。その後も独創的なアイデアをもとに、マシン開発は続いた。94年にハーレーの資本参加を受けてからは技術開発のスピードは上がり、ビューエル開発で得られた成果はハーレーブランドのマシンへもフィードバックされている。ハーレーが擁する唯一のスポーツマシンブランドであるビューエル。その真価はいかなるものなのか、先日発表されたばかりの2008年モデル「XB12R」をお借りし、そのポテンシャルを堪能してきた。

特徴

コンパクトで軽量な車体
そこ載せられたVツインエンジン

車輌詳細今年で25周年を迎えたビューエルの特徴として挙げられるのは「マスの集中化」、「バネ下重量の軽減」、「高剛性シャシー」だ。重量のあるパーツはできるだけ車体の重心に近いところに配置し、軽快さ、特にコーナーリング時の旋回性の良さを獲得することに注力されている。各パーツの配置の仕方も面白い。マフラーはエンジンの下に収められ、マスの集中以外にも重いパーツを低い場所に配置し、低重心化も図られている。ライディング時の乗りやすさに影響するバネ下重量への取り組みも独創的。定番のホイール軽量化だけではない。制動力を求めてダブルディスクが採用されるのが当然のスポーツバイクのブレーキシステム中で、あえてシングルディスクとなっている。ブレーキパーツですら軽量化の対象になっているのだが、これは制動力を犠牲にしてのことではない。通常ホイールの中心部に固定されるブレーキローターをリムに直接取り付ける手法が採られ、制動力はスポークを介さず、直接リムに伝えられるシステムを採用している。そのため、シングルディスクであってもその制動力は抜群。軽量化と制動力を両立させたブレーキシステムだ。

 

その他の部分にもアメリカ人らしい奇抜な発想が見える。ガソリンタンクをフレームが兼ねており、フレーム内にガソリンは貯められる、スイングアームがオイルタンクを兼ねるなど、思わずニヤっとしてしまう工夫が垣間見える。この独創的な車体に載せられるのはトルクフルな45度サンダーストームVツイン。極端な話、ハーレーのVツインエンジンがスポーツバイクのフレームに搭載されているのを想像して欲しい。猛烈なトルクを吐き出すエンジンを持ち、軽量コンパクトでスポーツ性が高い車体で街から峠道までを走破できるバイク、それがビューエルなのだ。

 

ビューエルは全モデルが上記の特徴を持ち、ハンドルポジションや排気量などでそれぞれの個性を出している。シティユースやツーリングに適したモデル、ON/OFFを問わず走破できるモデルなどラインナップは6種類ある。今回試乗したFirebolt XB12Rはビューエルのラインナップの中でももっともスポーツ寄りなモデル。他モデルに比べ、ステップのポジションは若干高く、ハンドル位置が低い位置に固定されたクリップオンハンドルのため、ライダーの姿勢は体を丸めて乗車するポジションになる。前傾姿勢は若干きついものの、幅広でニーグリップしやすいタンク(フューエルタンクではなく、実際はエアクリーナーの役割を果たす)形状のおかげで下半身で挟み込めばポジションはキツくない。前傾ポジションでライディングするため、一見すると小さく見えるウインドスクリーンも効果は充分。胸元の高さ程度までなら走行風から守ってくれる。

ポイント

コンパクトなフロントマスク

コンパクトなスクリーンを装備したフロントマスク。スクリーンカラーはホイールカラーに合わせたモノが装備され、統一感のあるデザインが◎。小さいながらスクリーンの風防効果もあり、快適さに貢献。

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ポイント

軽量ながら制動力のあるブレーキ

リムに直接取り付けられた軽量のブレーキローターを採用した“ZTLブレーキシステム”。シングルディスクながら素晴らしい制動力を誇る。超軽量のアルミニウム製ホイールと合わせてバネ下重量を軽減。

ポイント

エンジン下に配置されたマフラー

マスの集中化、低重心を意図してエンジン下に配置された極太サイレンサー。アイドリングでは迫力あるサウンドを奏でつつも、スロットルを回した際は心地いいマイルドな加速音なのが嬉しい。

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ポイント

カバーを外せばタンデムもOK

一見するとシングル専用車輌に見えるが、スリムなラインを形作る脱着可能なカバーを外せばタンデムシートが現れる。タンデム以外でも荷物の積載時などカバーを外す機会は頻繁にありそう。

試乗インプレッション

荒削りなエンジンが魅力的
体感速度は実数値以上

車輌詳細跨ってみると足つきは悪くはない。こういったスポーツバイクの場合、車高が高いため跨ったままの取り回しは少し重く感じるはずなのだが、XB12Rは非常に軽い。もう1つ印象的だったのはポジションのコンパクトさ。ステップ位置がかなり高い位置にあり、ハンドルもポジションが低いクリップオンハンドルなのだが、握った位置は体に近いところにある。イメージとしてはバイクの上で小学校のときによくやった“体操座り”をしている感じだ。乗り手にもマスの集中化を求めているようなポジションなのか。かなりコンパクトなポジションのため、走ると辛そうに思えたのだが、下半身でタンクをしっかりホールドすれば思ったほどは辛くない。ビューエルの他のモデルにはハンドルポジションがもっと高いモデルや、ステップ位置が低いモデルもあり、楽なポジションで乗れるラインナップもある。XB12Rはビューエルの中でも“ピュアスポーツ”モデルなので、乗り手がバイクに合わせるポジションでもいいのだろう。乗り手におもねってこない、このポジションがアメリカ人が作ったバイクらしくて好感が持てた。

 

車輌詳細エンジンをかけるとVツインエンジンが唸り始める。ハーレーと同じ45度Vツインのアイドリングが大人しいわけがない。大きく震えるエンジンからの鼓動はハンドル、シートから存分に伝わってくる。ひょっとしたらこの鼓動はハーレーよりもスゴイかもしれない。ハンドルを握ったままアイドリングをしばらく楽しんでみたが、エンジンに合わせ視界が上下する。エンジンの鼓動は頭の先にも伝わってくるのだ。これは面白いエンジンだ。初めて乗る人は「エンジンが壊れているの?」と思うかもしれないが、これが多くの人を魅了するVツインエンジンのバイブレーション。体だけではなく、心を揺さぶってくれるバイブレーションを感じさせてくれる。走りはじめると、エンジンのバイブレーションはスッと収まり、心地いい鼓動だけがシート下に残る。しかし、スロットルを捻った際のトルク感は凄まじい。軽い車体をハーレー譲りの図太いトルクが押し出すのだから当然なのだが…。スタート時の加速は水冷4発のマシンに劣っているとは思えないほどだ。体感的にはむしろ速く感じられるはず。

 

スムーズな加速が当然のスポーツバイクの世界で、ビューエルの"たが"が外れたようなこの加速は異質なものかもしれない。ただ、このエンジンフィーリングが多くの人を魅了する“味”なのだ。走りながらふと感じたのは「ドカティ乗りは気に入るだろうな」だった。私が初めてドカティに乗る前に持っていたドカティのイメージ“荒削りなスポーツバイク”にピッタリだ。「ツインエンジンをスポーツバイクに搭載したらどうなるか?」普通はそこから「もうちょっと乗りやすく」など牙をそぎ落とすものなのだが、ビューエルは牙はそのまま“味”として残しているのが面白い。他のスポーツバイクの100kmとビューエルの100kmでは圧倒的にビューエルの方が速く感じるのはそんな荒削りさにあるのだろう。荒削りと言っても「疲れる」という意味ではない。フロントの倒立フォークやリアサスの動きはしなやかで、シングルディスクながら制動力は抜群のブレーキに不安は感じない。エンジン以外の車体はピュアスポーツな構成ながら、エンジンの個性で荒っぽさを楽しませてくれるのがビューエルなのだ。

こんな方にオススメ

スマートなマシンばかりに
乗ってきた人に楽しんで欲しい

水冷4気筒のバイクに飽きが来ていながら「でも走りたい」という方。そんな方にはXB12Rは目からウロコのバイクかもしれない。絶対性能だけを追いかけたバイクではなく“楽しさ”が詰め込まれた稀有のモデルがXB12Rでありビューエルというメーカーの個性。長くスポーツバイクに乗ってきた人にこそ、XB12Rの素晴らしさは実感できるとはず。スポーツバイクとしてのポテンシャルは決して低くはない。法定速度+αまでならビューエルのエンジンで他のスポーツバイクに劣ることはなく、水冷4気筒のスポーツバイクについていくのは難しいことではないだろう。250Ccクラスの車体に1202ccの排気量、を搭載するXB12R、これが面白くないはずがない。スポーツバイクが好きなあらゆる人が楽しめるバイクがビューエル。間口が狭いマニアックなマシンではない。

総合評価

わかりやすい個性を持つマシン
試乗すれば病み付きになるかも

XB12Rが、というよりも初めて乗ったビューエルの面白さについのめり込んでしまう試乗だった。なまじハーレーのVツインエンジンを知っているだけに「ビューエルってこんな感じでしょう?」と間違ったイメージを抱いていたので「同じVツインでもこうもフィーリングが変わるものか」と新鮮な驚きがあった。軽量、コンパクトな車体にトルクフルなVツインエンジン。この組み合わせがこれほどマッチするとは…。多くのメーカーが高性能ながらスマートなマシンを販売する中で、荒削りで牙を持ったビューエルは輝いている。そのビューエルの中でも際立ってスポーティなXB12R。スポーツバイクが好き、というライダーは一度でいいから試乗してみて欲しい。わかりやすい個性を持つビューエルだけに、フィーリングが合う人は一度の試乗でビューエルの世界に引きずり込まれてしまうことだろう。一番重要なことはエンジンフィーリングが肌に合うかどうか。XB12Rが自分に合ったポジションではなかったとしても、ビューエルの6種類のラインナップの中からきっと自分にあったポジションのモノが見つかるだろう。

Firebolt XB12R

モデルイメージ250ccクラスのコンパクトな車体に1202ccの排気量を持つスポーツバイク。トルクフルなVツインエンジンが見せる加速力はやみつきになりそう。

 

DATA--

■エンジン=空冷4ストローク サンダーストームVツイン 1202cc
■価格=¥1,450,000(税込)
「XB12R」の詳細情報を見る(バイクブロス)

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編集部員 ターミー

編集部員 ターミー

数々のバイクを乗り継ぎ現在はハーレー「スポーツスター」、BMW「R80」、YAMAHA「SR」を所有するただのバイク馬鹿。これまでシングルかツインにしか乗ったことがなく、やや偏食気味なのが気にかかるところ。これからの成長を期待する。

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