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スーパーバイクレースとともに 996SPSでサーキットランを楽しむ僕にとって、1098への試乗は心躍るものだった。というのも前作の999シリーズは、僕の996をはじめとした916/996/998シリーズからデザインやバイクの作りが大きく変わってしまい、996の新しいモデルだとは思えなかったからだ。それが、1098では排気量が拡大された新しいエンジンながら、いろいろな部分が隔世遺伝のように916/996/998の面影を残している。そこに僕は特に惹かれているのである。ドゥカティのデスモドロミックL型二気筒エンジンには大きく分けて水冷と空冷があり、1098は水冷エンジンを搭載するスーパーバイクシリーズの最新作。このシリーズは、世界スーパーバイク選手権(SBK)にチャレンジするために’88年に登場した851以来、ドゥカティ全モデルの中で常に最高のパフォーマンスを与えられてきた。スーパーバイク選手権では2007年シーズンまで2気筒は1000ccまでという規則があったのだが、2008年シーズンからは1200ccまで認められるため、それを見越して排気量を1099ccにアップしたのが1098なのである。 未だ人気の高い916/996/998が
1099ccにスープアップされたエンジンは「テスタストレッタエボリューション」と呼ばれ、サイズアップにも関わらずヘッド周りはさらにコンパクトに進化。エンジン全体で5kg近い軽量化を実現している。エンジンは各部の見直しで999から20HP近い出力向上を実現し157HPをたたき出す。このパワーを受け止めるのがドゥカティ伝統の鋼管トレリスフレーム。日本製のスーパーバイククラスのバイクが、すべてアルミフレームなのに対して、ドゥカティはmotoGPマシンも含めて頑なに鉄パイプフレームを使い続けている。1098ではさらにこれが太くなり、カウルの隙間から覗く赤い骨格が存在感をアピールしてくるのだ。また、このIT化が進んだ時代に登場したドゥカティならではの装備にも注目したい。「DDA=ドゥカティ・データ・アナライザ」と呼ばれ、motoGPなどレースマシンに搭載されるデータロガー(記録)機能を1098Sでは標準装備(1098はオプション設定)する。これは水温、速度、エンジン回転数、ギアポジション、スロットル開度、ラップタイムといったデータを、専用のUSBメモリに記録し、パソコンの専用ソフト上でグラフ化して見ることができるというもの。1098ではバイクを移動するための道具から、スポーツライディングで楽しむ道具と捉え、オモチャ的な機能を付加した新しい試みだといえる。ワインディングを走った後、仲間とこのグラフを見ながら「アクセルの開けが足りないよ」と「回転数が高すぎるんじゃない」とワイワイやる話題の中心になりそうだ。
排気量アップを凌ぐパワー感
シートにまたがってみて「うーん、やっぱりコレコレ」と唸ってしまった僕。前作999では、シート高が780mmと乗りやすい高さになり、安定傾向のポジションになってしまったことをちょっと寂しく感じていた。やっぱりドゥカティはとても高いところに座り、そこからパタンと倒れるようにバンクする乗り物という感覚があった。その高いところから倒れる感じがこの1098で復活したように感じたのである。走り出してみてすぐに感じたのは、排気量アップがもたらす力強さ。996に乗り始めた頃、その加速感にシビれたものだが、1098は間違いなくそれを圧倒的に上回るパワーフィールを与える。試しに高速道路の本線料金所から低いギアを引っ張ってダッシュしてみたところ、猛烈な加速感に圧倒された。ただ、それは扱いきれないものではない。コーナーの立ち上がりでスロットルを開けるときに4気筒のような神経質さがなく、躊躇なくしっかり開けていける2気筒ならではのキャラクターが楽しい。
ワインディングで対話できる 低いハンドルに高いシート、そして高い回転数を回して走るエンジンキャラクターなど、1098は紛れもなくスーパースポーツ。そのため、なかなか日常の足として、本格的なツーリングには向かないのは明白だ。ムルチストラーダやモンスターに乗っていたオーナーが、同じドゥカティだからといって、同じ感覚で乗るのは無理があるかもしれない。逆に国産スーパースポーツにちょっと食傷気味なライダーにとっては、2気筒という全然違うキャラクターに対するチャレンジとしてオススメだ。DDAに象徴されるように、1098は移動する手段としての乗り物ではなく、あくまでもスポーツライディングを楽しむためのバイクなのだ。日常から開放された週末に、ワインディングで1098と対話する。まさに週末にだけ会うことができるイタリア人の恋人のような存在なのである。 motoGPでチャンピオンに輝く 今回、黄色い1098を目の前にして、バイクから放たれるオーラは何か違っていた。パッと見は最近の日本製スーパースポーツモデルに比べて強い主張がないものの、そこはドゥカティの最高峰モデルの最新作。試乗の約2週前にmotoGPでケーシー・ストーナーがチャンピオンを決め、2日前にはオーストラリアGPでドゥカティがワンツーフィニッシュを決めたのもあってか、さらにオーラが輝いて見えたのである。最近のドゥカティはmotoGPをはじめとしてとても勢いづいている。そんな勢いを受けて生まれたのが1098だと思う。実は前作999が出たときに、996のオーナーとして気にはなったが、結局買い換えるほど心が動かされなかった。今回の1098は大好きな996シリーズに回帰したようなスタイルやディテールだけでなく、全体から何かワクワクするようなものがビシビシと伝わってくる。試乗で立ち寄ったパーキングでも、何人かのライダーに声をかけられた。おそらく、これはドゥカティオーナーだけでなく、スポーツバイクが好きなら誰しもが感じる1098の最大の魅力なのかもしれない。 1098
DATA-- ■エンジン=水冷L型2気筒 4バルブデスモドロミック 1099cc |
八百山ゆーすけ バイク、カメラ、ケータイ、パソコンなど、幅広いジャンルを手がけるライター/編集者。“公称身長160cm未満”を生かし、女性や小柄なライダーに役立つ視点を持つ。長距離ツーリングからサーキットまでどっぷりバイクに漬かる人生。
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