バージンバイク
キャラクター&歴史

XRモタードシリーズの
フラッグシップモデル

Hondaの伝統的なオフロードモデル“XRシリーズ”に、前後17インチの足まわりと専用設計のフレームを採用し、モタード仕様としたのが“XRモタード”だ。今回紹介するXR400モタードを筆頭に250、100、50と、Hondaは4つのXRモタードをラインナップしているが、400はそのフラッグシップモデルというわけだ。XR400モタードが発売されたのは2005年3月のこと。市販モトクロッサーCRFのイメージを踏襲する躍動的なスタイルを引っ提げての堂々のデビューだったが、実はボクは2007年型のCRF250R(公道走行不可の市販モトクロスレーサー)のユーザーであり、大好きなCRFの戦闘的なフォルムを継承しているXR400モタードが一体どんなバイクなのか。登場して以来、大いに気になっていた。

 

オフロードモデルを所有したことのある人ならご存知のことかと思うが、市街地をオフロード車で走ると、とても軽快にキビキビ走れる。ハンドルは左右によく切れるし、目線も高いから混雑時にも強い。エンジンも低速からパンチがあるから走りやすい。“市街地はオフ車が最速” これはボクの持論だが、オフ車でアスファルトの上を走ると楽しいと感じるのはボクだけじゃないはずだ。ただ気がかりなのは、オフロードタイヤであるがゆえ、アスファルト上でのグリップ力が低い。そんな不安を解消すべく、モタードバイクにはロードタイヤが装着されている。オフ車の軽快さをそのままに、タイヤをロード用に変更し、アスファルト上でのパフォーマンスを飛躍的に向上させたモタードバイク。オンロードではオフ車以上に、もっともっと楽しいはず。うーん、試乗が楽しみだ!

特徴

17インチタイヤの採用に合わせて
各部を専用セッティング

車輌詳細言うまでもないが、モタードモデルとは単にオフロード車の足まわりにロードタイヤを履かせたものではない。まずはエンジンから。1997年に国内仕様が登場したエンデューロレーサーXR400R(公道走行不可のオフロード競技専用マシン。※参照)から受け継いだパワーユニットは、ブラックアウトされた空冷4ストローク単気筒エンジン。オフロードモデルならではの粘り強いパワー特性を持つSOHC4バルブエンジンは、キャブレター口径(XR400の36mmに対し34mm)やミッションのギア比を専用設定することで吸排気効率と加速性能を向上。低中速域で扱い易い出力特性を実現しながらも、高回転域までスムーズに吹け上がる、オンロードにも対応した味付けが施されている。

 

足まわりはフロントに43mm径の倒立フロントフォーク、リアには圧側22段階、伸び側24段階の減衰力調節機構を持つピギーバック型プロリンク式サスを採用。高い衝撃吸収性と軽快な操作性を実現した。ブレーキはフロントに276mm、リアに220mmの大径ディスクローターを採用し、制動力とコントロール性を飛躍的に向上。タイヤは前後輪に17インチの140mm幅のラジアルタイヤを装着し、軽量なDID製アルミワイドサイズリムと組み合わせることで、オンロードでの高次元なライディングに適応させた。17インチタイヤの採用に合わせて専用設計したセミダブルクレードルフレームは、ヘッドパイプまわりなどフレーム各部を強化。高い剛性を確保することで安定した旋回性を確保している。黒ボディの場合は赤フレーム、赤ボディの場合は黒フレームと、ボディカラーにより塗り分けている点も見逃せない。ワンタッチクリップ式サイドカバー、さらにビスカス式エレメントの採用により、エアクリーナーの整備を容易に。サブフレームも脱着式とし、整備性も配慮していることがうかがえる。さらにアルミ製リアマスターシリンダーガード、分割式クラッチレバーブラケット、ワイヤーロック付きテールバッグ、スチール製ガソリンタンクキャップ、盗難抑止に効果を発揮する強化ハンドルロック機構と強化キーシリンダーなど、ディテールもXRモタードシリーズのフラッグシップに相応しい上質の内容だ。

 

※XR400:国内仕様としては1997年に登場し、2001年に姿を消したエンデューロレーサー。国内外の数々のレースシーンで活躍したオフロードコンペティションモデル。

ポイント

耐久性と信頼性のあるエンジン

世界のエンデューロレースシーンで培われた技術をベースに、アスファルトでのパフォーマンスを追求した専用セッティングを施した空冷エンジン。400ccならではの沸き上がるような中回転域のトルク特性を追求した。

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ポイント

整備性の高さも魅力

工具いらずのワンタッチクリップ式で、サイドカバーは簡単に脱着が可能。お手軽なビスカス式エレメントを採用し、エアクリーナーの交換もスピーディに行える。整備性の高さも大きな魅力だ。

ポイント

強力な制動性能と絶妙のタッチ

フォークは倒立式を採用し、高次元の操舵性と操縦安定性を獲得。245mmのストロークを確保し、衝撃吸収性に優れる。ブレーキは軽量かつ高剛性のキャリパーと焼結パッド、276mm径ローターを組み合わせる。

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ポイント

アスファルト走行に対応

リアには圧側22段階、伸び側24段階の減衰力調整機構を持つピギーバック・モノショックを装備。フレームは強度と重量とをバランスさせたセミダブルクレードル。エンジンはスイングアームピボットと同軸にマウント。

試乗インプレッション

過激なセッティングは捨て
トータルバランスを優先

車輌詳細400ccのモタードマシンというと、コンペティションで過激なキャラクターを想像してしまう人もいるかもしれない。しかしXR400モタードの場合、それは当てはまらない。日常の足として使い勝手が良く、快適性も高い。ツーリングに出かけたくなる性格なのだ。まずエンジンだが、実用域でトルクが楽しめる旨味のある味付け。カタログスペック(最高出力30ps/7,000rpm)を見て「パワーが物足りないのでは」と思ってしまうのは早合点。アクセルを捻った分だけ加速していき、市街地をキビキビ走れる。高速道路では風圧こそ辛いものの、追い越し車線を長時間リードし続けるポテンシャルを持ち合わせている。特に中速域でのトルク感が厚いことを付け足しておこう。ポジションはツーリングも楽しめるゆったりとしたもの。足つき性も考慮され、モトクロッサーのようなツマ先がツンツンという状態ではない。身長175cm/体重67kgのボクの場合、片足がしっかり地面に届き不安は感じない。車重は軽いし、もう少しシート高があっても大丈夫そうだ。

 

車輌詳細乗り心地が良いのはシートのおかげで、長時間乗ってもお尻が痛くならない。林道ツーリングでは目的のステージまでの高速道路が億劫だが、これなら高速巡航も難なくこなせる。ロードタイヤであるものの、林道も十分楽しめることを付け加えておこう。取り回しはXR250モタードとほとんど変わらない手軽な感覚で、普段の足としても気軽に使えそうだ。ハンドリングは軽く、足まわりもしっかりしている。制動力が高く、コントロール性の高いブレーキのおかげでワインディングでは、どんどんペースが上がる。オフロード車ならではのリラックスして乗れるポジションや、低速から扱いやすいエンジン、そして軽量な車体をそのまま受け継いでいるXR400モタード。モタードレースに出るための過激な乗り味ではなく、街乗りからツーリングまで楽しめるトータルバランスを優先した1台と言えよう。このモデルは長く付き合えそうだ。

こんな方にオススメ

街乗りからツーリングまで
幅広い用途に使えるバイクを求む人へ

400クラスのモタードマシンといえば、SUZUKIの『DR-Z400SM』が好敵手となるが、DR-Zはモタードレースに持ち込んでも楽しめそうなレーシーな乗り味。クラッチを使わなくてもフロントタイヤが浮き上がるような過激なセッティングが施されているが、こちら(XR400モタード)は乗り味も考慮されたトータルバランスに優れるオートバイだ。レースにそのまま参戦できるような過激な味付けにはせず、街乗りからツーリングまで幅広いステージで楽しめる乗り味を追求している。普段はストリートでガンガン走って、休日はツーリング、そんな使い方をボクならオススメする。

総合評価

“使える1台”とは
こういうマシンを言う

過激なモタードマシンを連想しては間違いだ。“扱いさすさ”を忘れることなく、レーシーな乗り味は潔く切り捨てている。レースを目的としていないユーザーに向けられているのである。エンジンは低中速を重視し、レスポンスも穏やか。ストリートからツーリングまで幅広いステージ、ビギナーからエキスパートまで幅広い層が楽しめるようなキャラクターが与えられている。モタードマシンであるがゆえ、オンロードは勿論、林道などダートも楽しめるのは今さら言う必要もない。今回、それほどの試乗時間がなかったので断念したのだが…首都圏から高速道路を使って100km程度を移動、さらにワインディングを満喫してから林道に入っていく。そんな欲張りな使い方をしたら楽しめそうだ。

 

街乗りを中心に使って、休日にはツーリング。ツーリング先ではワインディングだろうが未舗装路だろうが、ステージを選ばず高いパフォーマンスが楽しめる。“使える1台”とはこういうマシンを言うのだろう。そうだ、この夏はコイツを長距離フェリーに積み込んで北海道ツーリングなんていうのはどうだろう。道東、道北のワインディングと林道を虱潰しに走り抜く。想像していたら、いつの間にか使い込んだロードマップを開いている。なんだか幸せな気分になってきた。バイクはロマンのある乗り物。こんなふうに乗っているだけで夢が膨らむマシンこそ、好いバイクの証でもある。

XR400 Motard

モデルイメージ市販モトクロッサーCRFのデザインコンセプトを踏襲しつつ、前後輪に17インチのオンロードタイヤを装着。専用設計としたフレームをはじめ、大径ディスクブレーキ、倒立フォークなどオンロードに特化した装備を誇る。

DATA--

■エンジン=空冷4ストロークOHC4バルブ単気筒 397cc
■最高出力=30ps/7,000rpm ■最大トルク=33Nm/5,500rpm
■価格=¥651,000〜(税込)
「XR400」の詳細情報を見る(バイクブロス)

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青木 タカオ

青木 タカオ

バイク雑誌編集部員を経て、現在はフリーライター/編集者として、あらゆる二輪雑誌に携わる。16歳で中型二輪免許を取得し、18歳で限定解除。高校生の頃から日本全国を駆け回り、アメリカやタイなど海外ツーリングの経験も。