バージンバイク
キャラクター&歴史

サーキットで生まれた
ピュアスポーツマシン

今回紹介する「CBR600RR」のルーツは、約20年前にさかのぼる。1986年に初代CBR600Fが欧州・北米向けに誕生し、その後しばらくスポーツツアラー的な位置付けで進化を続けてきた。1992年には日本国内向けモデルが登場。当時の免許制度では限定解除という壁があり、大きなセールスが期待できない600ccのスポーツバイクというカテゴリーにあえて投入され、その後も継続してこのクラス唯一の存在となったのもこのCBR600シリーズだ。

 

1999年まではフルカウルのスポーツツアラー的なスタイリングながら、その運動性能の高さから、欧州のWSS(スーパースポーツ世界選手権)やアメリカのAMASS600で活躍するなど、スーパースポーツとしても実力を発揮し人気を博すようになる。こうした市販600ccスポーツバイクを使ったレースは、その上位カテゴリーにスーパーバイク世界選手権やAMAのスーパーバイククラスがある。しかし、改造範囲が広いスーパーバイクに比べて、スーパースポーツクラスはほとんどノーマル状態でなければならないという厳しい規則のため、各社がベースモデルの性能向上にしのぎを削ってきた。そうした中、CBR600は2001年に登場させたCBR600F4iでインジェクションを搭載し、スポーツ性能を際立たせる方向に進化。そして2003年には当時のmotoGPマシン「RC211V」の技術をふんだんにフィードバックした「CBR600RR」にスイッチ。サーキット生まれのピュアスポーツマシンにふさわしく、ホンダのモデルの中で唯一「CBR954RR Fire blade」にだけが冠していた「RR」の称号がこの600ccにも与えられた。その後、2005年にフルモデルチェンジ、さらに2007年3代目として登場したのが今回紹介するCBR600RRだ。

特徴

公道でも扱いやすいよう進化
コンパクトで軽量な2007年モデル

車輌詳細国内4メーカー+外国メーカーの600ccが争うスーパースポーツクラスのレースに勝つため、各社の600ccスーパースポーツはモデルチェンジの度に年々過激になってきていた。より高いパフォーマンスを持つ1000ccクラスよりも600ccクラスのほうがレーシーなキャラクターになり、一般公道で楽しむユーザーにとっては返って扱いづらいものになっているのも事実。そんな中、2007年春に発表されたCBR600RRは、より軽く、そしてコンパクトにする目的を“扱いやすさ”という方向に振っているのが特徴。エキスパートライダーやサーキットでのパフォーマンスはもちろん、一般公道、ワインディングやビギナーでも楽しめるバイクに仕上がっている。2005年モデルから8kgも軽量化、各部のサイズを見直して、よりライダーを中心にコンパクトな車体になっている。2007年モデルでは、エンジンもより中低速を出力を上げてライダーの意思に忠実な操縦性を追及してある。また、1000ccクラスよりもきつい前傾姿勢を強いられる600ccクラスの中にあって、あえてハンドルバーの位置を10mm高めて、スポーツライディング以外での快適さを生み出してあることも追記しておこう。

 

デザインは、このCBR600RRが始めたシングルサイレンサーをセンターアップタイプとするスタイルを継承。「RC211V」譲りのデザインだったカウルは、ここ1〜2年のスーパースポーツのデザイントレンドを汲み、大胆に側面のパネルを削ぎ落としたフォルムとなっている。特にアッパーカウル周りをシェイプアップして、ノーズに大きな吸入口を設けたレイアウトは、前作から大きくイメージを変えた。カラーリングには赤×黒、青×銀、黒に加え、最近流行の白を基調としたモノトーンも用意され、サーキットだけでなくストリートにも映える。RC211Vのテクノロジーをふんだんに取り入れたCBR600RRは、センターアップマフラー、ユニットプロリンクサスペンションなど、ホンダらしく新しい技術が惜しみなく投入されている。2007年モデルでは新たに、CBR1000RRに搭載されていた電子制御ステアリングダンパー「HESD(Honda Electronic Steering Dumper)」を装備。また、ブレーキマスターがラジアルポンプ式となり、よりスムーズなブレーキ操作を実現している。マフラーに高価なチタン材を採用したり、キャリパーをラジアルマウントするフロントフォークのアウターチューブにブラックアルマイトを施すなど、細部に至るまでレーシングマシン然としたクオリティのパーツが組み合わされたCBR600RRは、オーナーの所有欲をかき立ててくれるはずだ。

ポイント

水冷並列4気筒エンジン

もともとコンパクトな600ccエンジンを2007年モデルではさらに小型、軽量化。前後長を大幅に詰め、エンジン単体で8kgも軽くなっている。国内仕様は厳しい騒音規制に対応するため、カウルの隙間を黒いカバーで覆っているのが特徴。

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ポイント

電子制御式ステアリングダンパー「HSED」

高速走行時に路面からの外乱や振動を吸収するステアリングダンパー。CBR1000RR譲りの電子制御式ユニットは、高速時には重くなり低速時には軽快に動くという、機械式ではなかなか難しい車速に合わせてキメ細やかな制御をしてくれる。

ポイント

足付き性のいいスリムなシート

スーパースポーツらしく820mmという高めのシート。しかし前方は徹底的に絞り込んであって、足付き性は悪くない。ステップもしっかり車体側に追い込まれていて、腰を落としたライディングでもしっかりホールドできる。小柄なライダーにもムリを強いないポジションだ。

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ポイント

コンパクトなフロントカウル

一新されたフロンとマスクは、左右ライトの間に大きな吸入口を持つ個性的なデザイン。走行風を直接エアクリーナーボックスに送り込み、効果的にエンジンパワーを引き出す構造。中央のポジションランプには白色LEDを採用し高級感を演出している。

試乗インプレッション

回さずとも楽しい
街中も峠もOKなマシン

車輌詳細CBR600RRのようなスーパースポーツは、最先端のテクノロジーを惜しみなく投入した技術の粋だけに、個人的に興味が尽きない。特にこのCBR600RRの国内仕様は、デビュー直後に乗ったことがある知人から「自分がうまくなった気になるよ」と教えられていただけに期待は大きかった。またこれまではどちらかというと、レースでの覇権を追求してサーキットでのパフォーマンス重視だったのが、2007年モデルでは大きく変更された。「公道でも楽しめる、誰にでも楽しめる」というコンセプトには、大いに興味を掻き立てられたのである。試乗は早朝に都内を抜け、よく行く関東近県のワインディングロードに繰り出した。やはり街中ではスポーツラインディングを意識した、固めのサスペンションがコツコツと突き上げてくる。600ccとはいえトルクフルなエンジンは5000回転以上回すことを必要とせず、あわよくば約1500回転のアイドリングから3000回転あたりを使うだけで十分走れてしまうし、ギクシャクせずに疲れなかった。高速道路に乗ってもその印象は変わらず、6速に入れてしまえば5000回転ちょっとで法定速度でクルージングできてしまう。5000回転あたりを越えると、エンジンノイズやハンドルから伝わる振動が目立ち始め、そのエンジンキャラクターの片鱗が少し見え隠れしてくる。試しに低いギアで引っ張ってみようとしたが、カタログスペックどおり、1速でレッドゾーンまで回すとあっという間に時速90km、2速でもう法定速度オーバーの域に達してしまった。

 

車輌詳細一番楽しみにしていたワインディングロードに入る。まずは体を動かすことなくリーンウィズのままコーナーに入っていく。するとバイクは自然にスーッとかなり深い角度まで傾いていくのである。これにはびっくりした。というのも、普段はちょっと旧いバイクに乗っていて、どうしてもコーナーでは「どっこいしょ」と自分でバイクを寝かせる操作をしている感じ。それがCBR600RRは、ほとんど何もしなくても勝手にスムーズにバイクが寝ていってくれるのである。ヘタをすると自分自身が傾いていく感覚よりもバイクが先に傾いていくため、リーンアウト気味になるのがちょっと心細かったりもするぐらいなのだ。

 

そこで、スーパースポーツらしく腰をずらして、いわゆるハングオフの姿勢で走ってみる。そうすると、この自然にバイクが傾いていくリズムがとても楽しくなってくる。これが、“自分自身がうまくなった気になる”ということかなと思った。決してムリをしているわけでもないのに、自然にペースも高まってくる。もちろん、ここで自分を見失うと危ないことになってしまう。しかし、リズムをキープしながらコーナーを右に左に駆け抜けていくと、それがとっても楽しくなってくるのだ。ちなみに、CBR600RRのタコメーターは、時計でいうと6時にアイドリング付近の1000回転、9時が7000回転、12時が13000回転で、レッドゾーンは1時の15000回転からとなっている。ワインディングに入り「レッドゾーンまで引っ張り回して走るゾ」なんて思っていたのだが、悲しいかなボクの技量では結局タコメーターの針が9時より先に進むことはなかった。その先のパワーは公道では引き出せないし、言い訳がましいが、それを引き出すまでもなく、十二分に結構なペースで走れてしまうのである。そのくらい、国内仕様ということで日本国内の道路状況に合わせて調教されたエンジンは、中低速だけでも楽しく走れるようになっていたのである。往々にしてこうしたスーパースポーツのポジションは、ハンドルが低く、遠いために前傾姿勢がきつくなるのであるが、CBR600RRはそれが耐えられないというほどではなかった。やはり前作よりもあえて10mmアップしたハンドル位置が効いているのかもしれない。また、シート高820mmというスペックほど足付き性は悪くなく、しっかり絞り込まれたシートのおかげで、真っすぐ足を下ろすことができ、小柄なボクでも少し腰をずらせば足の指で地面をつかむように片足を着くことができたのにも好感が持てた。

こんな方にオススメ

性能を使い切りたい人にはピッタリ
軽量のため小柄な人にもオススメ

CBR600RRは、なんと言ってもスーパースポーツの1台。まずは、やはりバイクで走ること、特にスポーツライディングを楽しみたい向きに最適な1台であることは間違いない。また、これからこうしたスポーツバイクに乗ってみたい、といったビギナーにはその楽しさをムリすることなく味わえる懐の深さを持っている。よく、600ccは1000ccより過激だからワインディングだけでなくツーリングや街乗りにも使うなら1000ccの方がいい、という向きもあるが、少なくともこのCBR600RRは、そこまで過激な印象は受けなかった。また、コンパクトで軽量な車体はライダーの体格を問わず、特に小柄なライダーには1000ccよりもこちらがオススメ。以前、高速道路のサービスエリアで600ccスーパースポーツに乗る女性ライダーを見たことがある。しっかりウェアもバイクのキャラクターに合わせたもので、かなりカッコよかった。

 

もちろんこうした体格で600ccを選ぶという以外に、一般的な体格のライダーでも、1000ccのパワー感という誘惑を振り切ってあえて600ccを選ぶことは、どこか“ツウ”な印象を与えるハズだ。それも、このクラスで唯一の国内仕様であるCBR600RRというチョイスは、バイクを使い切って走る楽しさが得られるうえに、ワインディングたどり着くまでの過程が“苦行”にならずにすむだろう。

総合評価

国内仕様で充分
物足りなさなんて皆無だ

CBR600RRをはじめとしたスーパースポーツは、もともと欧米での販売を主眼に作られているため、大柄な体格の欧米人がピークパワーをガンガン使って、日本では考えられないようなスピードで走るように設計されることが多い。そのため、日本国内仕様といえば、自主規制の馬力規制に合わせてパワーを絞り、排気ガス規制や騒音規制に縛られていろいろなところが“制限”された、なんとも“物足りない”感のあるあるバイクと捉えられてきた。そのため多くの場合、“フルパワー”を標榜する逆輸入車に走ったり、国内仕様を買って各種“制限”を取り外してフルパワー仕様にするのだという。

 

しかしこのCBR600RRに関して言えば、サーキットで最高速度を出し切る必要がある場合を除いて、一般公道のワインディングからサーキット走行まで、レーシングライダー以外の人はこれで十分楽しめるんじゃないかと思った。だって、結構攻めて走っていたつもりでも、タコメーターの針はまだ半分しか回っていなかったのである。コレを1時の位置まで回しきって走れるのは、そうとう乗り込んでサーキットにでも行かない限り、きっとムリなのである。

CBR600RR

モデルイメージ1987年から連綿と続くCBR600シリーズの最新作が、フルモデルチェンジを受けて登場した2007年モデル。2003年に登場した“RR”からよりサーキットでのパフォーマンスを追及して進化し、2007年モデルではそのテクノロジーを誰にでも扱いやすいキャラクターに振り向けた。

DATA--

■エンジン=水冷DOHC並列4気筒 599cc
■最高出力=69ps/11,500rpm ■最大トルク=51Nm/8,500rpm
■価格=¥1,076,250(税込)
「CBR600RR」の詳細情報を見る(バイクブロス)

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八百山ゆーすけ

八百山ゆーすけ

バイク、カメラ、ケータイ、パソコンなど、幅広いジャンルを手がけるライター/編集者。“公称身長160cm未満”を生かし、女性や小柄なライダーに役立つ視点を持つ。長距離ツーリングからサーキットまでどっぷりバイクに漬かる人生。