キャラクター&歴史

ホンダ伝統の90度Vツインを搭載
時代時代にエポックな入門バイク

「VT」と聞くと懐かしさがこみ上げてくる人は、まさにバイクブーム華やかかりし時代に青春を過ごした世代ではないだろうか。今回紹介する「VTR」はまさしくそのVTの末裔ともいえるモデルである。VTシリーズは250ccというベーシックなクラスながら、時代時代の新しいチャレンジを盛り込んだホンダスピリッツのひとつの流れだった。250ccながら本格的なフルカウルを纏った「VT250F」、アルミダイキャスト製の「CASTEC」フレームが特徴的な「VT250スパーダ」、Vツインを生かしたアメリカン「V-ツインマグナ」、400ccをも思わせる大柄な車体がひとクラス上の車格を漂わせる「ゼルビスVT250F」など、ビギナーでもこの中からひとつくらいは車名に思い当たることができるだろう。そして、’97年に当時のドゥカティ人気に端を発したVツインスポーツバイクブームの空気を映して登場したのがこの「VTR」である。

特徴

いっさいのムダを省いた
“ベーシック”な車体構成

車輌詳細VTRが登場したとき、個人的には“ミニモンスター”?と思ってしまうほど、当時人気が高まりつつあったモンスターの雰囲気を漂わせている。Vツインエンジンを中心に、ブッとい丸パイプの鉄フレームをかぶせ、エンジンの後端に直接スイングアームをマウントするピボットレスフレーム構造。艶やかな丸みを持ったタンクに小ぶりなシートカウル、スポーティなポジションながらハンドルはバータイプ、あえてタコメーターを廃したシンプルな造りは、まさにドゥカティ・モンスターそのものだった。皮肉にもモンスターがドゥカティの中で未だに基本を変えないロングセラーモデルなのと同様、VTRも登場から10年間、ほとんど変わることなく存在してきた。

 

 

まさに“これぞベーシック”という車体構成で、いっさいのムダを省いた合理的な設計。前後左右どこから見てもスッキリとしたスタイルは誰が見てもスタンダードなバイクだと感じるフォルムだ。フレームは鋼管パイプを使ったトラス構造で、その後端にスイングアームをマウントしていない。スイングアームはエンジンに直接マウントすることで、後輪からの振動をエンジンで緩衝してしなやかな乗り味を与える設計になっている。エンジンはVT250Fで初めてホンダに登場した250ccV型2気筒ユニットを、長年にわたって熟成させてきたもの。市街地ではVツインらしい鼓動を感じることができ、一方、ハイウェイで高回転を回せば、ホンダらしい伸びやかな吹け上がりを見せるキャラクターを持っている。

 

ポイント

VTRを印象付けるトラスフレーム

ドゥカティとよく似た印象を与える鋼管トラスフレーム。図太い丸パイプが250ccという車格を忘れさせてくれる。ピボットレス形式とすることで軽快でしなやかな操縦性を生み出している。

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ポイント

25年にわたって熟成してきたエンジン

90度V型DOHC4バルブ250ccユニットは、1982年に「VT250F」の誕生以来、ホンダが熟成してきたエンジン。6000回転あたりまではパルシブ感を、それ以上では滑らかなフィーリングを与えてくれる。

ポイント

ワンランク上の車格を漂わす二眼メーター

‘97年の発売当初は速度計だけだったメーターユニットも、2002年のマイナーチェンジで現在の回転計と並ぶ二眼タイプになった。たっぷりとしたデザインはひとクラス上の車格を印象付ける。

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ポイント

荷かけフックを装備した細身のシート

細身にデザインされたシートは、高さが760mmと足付き性抜群。シートから後ろに続くシートカウルも小振りなフォルムとなっている。ただし、その印象に比べて荷かけフックはしっかりとしたものを装備。

試乗インプレッション

Vツインのパルシブさと
しっかりした足回りが楽しい

車輌詳細ベーシックな250ccネイキッドというところで、乗る前にはつかみドコロのないような気がしていたのだが、実際に走らせてみるとしっかりロードスポーツとして楽しめるバイクだった。VTRを目の前にして、“ベーシックなバイク≒コストを抑えた作り”ということがあまり感じられない仕上げがホンダのうまいところだと思う。もちろん各部を細かく見ていけば、それなりの作りではあるのだが、全体としてみたときに、車体色の赤、フレームなどの黒、そしてエンジン周りのブライトシルバーと、きっちり3つのトーンを揃えて部分を主張させないところが、まとまりを見せているのだろう。こうした配慮はまたがったときに目に入ってくるメーター周りや、ヘッドライト周り、ウインカー、ミラー、ホイールと、細かいパーツに手を抜かないホンダの良心ともいえるのではないだろうか。

 

車輌詳細エンジンを始動すると250ccながらしっかりVツインらしいパルスを感じられる。確かに250ccというボリュームなので、ビッグツインほどのものは期待できないが、それでもモーターのような4気筒に比べて“エンジンが動いてます”という感覚が強いのが嬉しい。走り出してもその印象は変わらず、6000回転あたりまではしっかり“Vツインに乗っている”という実感があり、それ以上の回転域になると今度はホンダらしいスムーズな伸びを見せてくれた。足回りは沈む方にストロークが短くしっかり固められている。このクラスだと街中での軽快感を出すために“動くサス”になっていることが多いのだが、このVTRはとても硬派な感じを与えてくれる。カチッとしたシフトフィール、タッチの良いブレーキなど、VTRはしっかりロードスポーツとしてのマインドを忘れていないようだ。

こんな方にオススメ

ビッグバイクユーザーにも
使いきれる楽しさを再び

いまや風前の灯となった国産250ccロードスポーツバイクのカテゴリー。それだけに、ユーザーの関心も低く、それがまたニューモデルが出ないという悪循環につながっている。しかし、250ccは車検もなく400cc以上に比べてランニングコストが安い。またサイズも扱いやすいだけに使い切る楽しみもあるはずだ。VTRは見た目にとても地味なバイクではあるが、スポーツバイクとしての素材としてはしっかりしている。車輌価格も抑えられていて、いわゆる入門バイクとしては最高。さらにはパワー、大きさに疲れたユーザーにとって、改めて原点回帰してみるバイクとしては申し分ないモデルだといえるだろう。

総合評価

バイク便御用達ではない
しっかりとしたスポーツバイク

「VTR」は東京都内で見かける250ccロードスポーツの中では一番多いのではないだろうか。というのも個人的に“バイク便御用達バイク”というイメージが強いから。試乗してみても、硬い足回りは荷物のため? 丈夫な荷かけフックは箱を固定するため? と勘ぐってしまったほどだ。“業務用→車輌価格が安い→作りが…”という図式まで頭の中には出来上がっていたのだが、実際にVTRを前にして、決してそうではないことを再認識した。残念ながら9月1日に施行された新排気ガス規制により生産終了となり、現在は販売店の在庫分しか残っていない。しかし、手の内で楽しめるスポーツバイクとして、今後、再びこのVTRのようなバイクが再登場することを願わんばかりだ。

VTR

モデルイメージ伝統のホンダ250ccDOHC水冷V型二気筒エンジンを鋼管ダイヤモンドフレームに積むベーシックネイキッド。小振りな車体が誰にでも扱いやすいロードスポーツモデル。

DATA--

■エンジン=水冷4ストロークV型2気筒 249cc
■最高出力=32ps/10,500rpm ■最大トルク=24Nm/8,500rpm
■価格=¥483,000(税込)
「VTR」の詳細情報を見る(バイクブロス)

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八百山ゆーすけ

八百山ゆーすけ

バイク、カメラ、ケータイ、パソコンなど、幅広いジャンルを手がけるライター/編集者。“公称身長160cm未満”を生かし、女性や小柄なライダーに役立つ視点を持つ。長距離ツーリングからサーキットまでどっぷりバイクに漬かる人生。