バージンバイク
キャラクター&歴史

操る楽しさを再認識させる
カワサキ650シリーズの末弟

近頃のバイク雑誌やカタログに目を通すと必ず出てくるのがハイスペックな数字の嵐。これはあながち間違った認識ではないだろう。バイクが走るための乗り物で、本能的に速さを追求する存在というのは事実で、ライダーもそれを求めメーカーも望まれる以上の回答を出してきた。その結果、いわゆるスーパースポーツの台頭を迎え、2000年以降のモーターサイクルは長足の進歩を遂げてきた。10年前には夢のようだったスペックも今や大型のスポーツバイクなら当たり前のように備えており、誰もが気軽にハイパワー・ハイポテンシャルなマシンを楽しむことができる。そんな時勢の中、2006年にカワサキからER-6nという興味深いマシンが発表された。排気量650ccの並列2気筒エンジンを搭載したモデルは尖ったスペックこそ持っていなかったが、バイクのもう一つの楽しみである「バイクを操る楽しさ」を追求することで、独自の存在感を確立。ハーフカウルを備えたER-6sとあわせてエンスージアスティックなライダーから支持を集めた。そして2007年、新たに発表されたのが今回紹介する「ヴェルシス」だ。ヨーロッパで人気の高いアルプスローダーのスタイルを持ったスポーツモデルは、国内市場で見るどんなバイクとも異なった雰囲気を漂わせている。新しいツインエンジンと倒立フォーク、鋼管フレーム、そして立ち気味のポジション。ルックスやスペックだけでは想像できないテイストを楽しめるという期待感を胸に秘め、早速今回の試乗を開始した。

特徴

個性を主張する鮮烈なスタイル
思慮深さを感じさせる車体構成

車輌詳細ヴェルシスを一目見たときに感じる印象は、今までのバイクと比べた時の「異質感」かもしれない。正面から見ると異型のヘッドライトと小ぶりのスクリーンが新型のツアラーを想起させるが、足元を見れば細やかな調整機構を備える倒立フロントフォークとアルミ製スイングアームがスポーティな雰囲気を漂わせている。見るだけで分からないので軽くまたがってみると、ハンドルはアップライトなポジションでシートは腰を動かしやすい形状となっている。ちょうどツアラーとスポーツの中間のようなスタイルだ。どのカテゴリーにも所属していなように見えるが、いずれのカテゴリーのテイストをにおわせるスタイルはまさにヴェルシスならでは。最近のバイクに多いゴツめのアルミツインチューブフレームではなく、鋼管トレリスフレームを採用しているところも面白い。また、マフラーの処理はかなり個性的でフレーム下部にセットされており、低重心化に貢献するとともに独特のルックスを演出している。

 

また、細部を見ていくと気づくのだが、ライディングだけでなく日常の使い勝手のよさもしっかりと考慮されている。シートはタンデムを考慮した形状となっているだけでなく、パッセンジャーの足にも負担がかかり難い形状だ。タンデムグリップも標準装備されているほか、ステップ部分が荷物積載時にフック等が掛けやすい形状になっていることも好印象。この装備ならツーリング時も余裕のあるパッキングが行え、タンデムライドでは快適なクルージングが楽しめそうだ。ルックスからくる個性と細部まで考慮されたユーザービリティは、ヴェルシスというバイクの大きな美点と言える。このカテゴライズされない魅力は、こだわりのあるライダーならきっと理解してもらえるだろう。

ポイント

他と違う個性で魅せる異型ヘッドライト

ヴェルシスの個性を印象付ける顔といえばこのヘッドライト。上下で異なる形状を採用しておりインパクト十分で、夜間の光量も問題なし。遠くから見ても一目でこのバイクだとわかるルックスと、ライディングに必要な実用性を兼ね備えた装備だ。

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ポイント

シンプルかつ必要十分なコクピット

ホワイトパネルのタコメーター+デジタル表示のスピードメーターは視認性が高く、ツイントリップメーターはツーリングで活躍してくれる。スクリーンは小ぶりながら適度な防風性能をもっているので、街中〜国内での高速道路巡航なら快適な移動が可能だろう。

ポイント

体重移動を楽しめるスポーティなシート

ヴェルシスの中で最も注目したいポイントはこのシート。ライダー側は体重移動がしやすいように絞り込まれており、パッセンジャー側は適度な段差とクッションで快適かつ視界良好。ライディングの楽しさはこのシートにあるといっても過言ではない。

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ポイント

便利な形状のタンデムステップ

目立たないながらもポイントが高いのがこのタンデムステップ。実際にタンデム側に着座してみたが、窮屈さの無い形状になっている。また、ツーリング時にはフックを掛けやすく、パッキングの自由度を高めてくれそうなところも嬉しい。

試乗インプレッション

乗り手のスタイルに応える
自由自在のパフォーマンス

車輌詳細これまでにないタイプのバイク、ということで期待に胸を高鳴らせて跨ってみると、ポジションは意外なまでにベーシック。ストロークの長いサスペンションとシート形状のおかげで、見た目よりも足つきは良く初期のサスペンション応答性も良好だ。エンジンに火を入れると比較的おとなしい排気音と共に、パラツインならではのバイブレーションが手から伝わり、軽くアクセルを返すと中排気量モデルらしい元気なレスポンスを見せてくれる。さて、早速走りだしてみると、これが非常に面白い。スペック上のパワーは大きくないものの、太めのトルクと心地よいレスポンスは街中でリードを取るには十分。かといって無駄にスピードが乗り過ぎず、ゆっくりとした流れでもストレスの少ないライディングが楽しめた。

 

車輌詳細また、コーナリングの楽しさはまさに別格ともいえるもので、スムーズな旋回から腰を入れたすばやいコーナリングまで、乗り手の思うままに曲がってくれる。特に曲がり始めのダイレクト感は秀逸で、ブレーキングから荷重までをスムーズに行うためのインフォメーションをしっかりと伝えてくれ、初めて走る道でも恐怖感が少ない。これはアップライトなポジションによる視点の高さも影響していると思われるが、バイクから伝わってくる情報量の多さも大きなウエイトを占めている。とにかく、曲がることを中心とした「バイクを操る」感覚が分かりやすく、それが乗るほどに楽しさを増してくれるのだ。中でも、感心したのが乗り方に対する許容性の広さ。スポーツするためのアグレッシブなスタイルから、ツーリングを楽しむゆるやかなライディングまで受け入れてくれるヴェルシスの懐の深さは魅力的だ。コンマ一秒を削るような走りには向いていないが、自分の技量と向き合いながらライディングを楽しむ、という点ではどんなスポーツモデルにも引けをとらないだろう。

こんな方にオススメ

「バイクに乗ること」を楽しみたい
エンスージアスト向けの一台

ヴェルシスは、一見しただけでは本当の魅力がわかりにくい一台だ。個性的なルックスも用途を決めたライダーには向いていないかもしれないし、スペックを追求するならカタログの数値は物足りない。そういう表面的な部分でなく、バイクと向き合うことでライディングの楽しみを追求することに悦びを覚えるなら、ヴェルシスは選択肢の上位に必ず入ってくる。乗り手のレベルにかかわらずライダーを受け入れ、技量が向上すればするほど多彩な走りのバリエーションを見せてくれるヴェルシスは、まさにこだわりのあるライダーのために用意されたモデルといっても過言ではない。この特別なフィーリングは乗らなければ伝わらないかもしれないが、機会があれば是非体験して欲しい。

総合評価

乗れば乗るほど味わいが深まる
「スルメ」のようなスポーツバイク

これまでいろいろなバイクに乗ってきたが、ここまでライダーの入力で表情が変わるバイクも珍しい。丁寧に無駄の無い操作を心がければ、ヴェルシスはどこまでも心地よいコーナリングを楽しませてくれるし、適当が過ぎればそれなりの走りしか見せてくれない。ただ、エッジの効いたスポーツモデルと違うのは、ライダーの技量不足をしっかりと受け止めてくれるところだろう。乗れば乗るほど応えてくれるこのバイクは、噛めば噛むほど美味くなるスルメのような味わいを持っている。個性的なルックスと、奥深いパフォーマンス、そして乗るほどに得られる甘美なライディングフィールは、まさにヴェルシスならではの未体験ゾーン。今回の試乗では普段より距離を乗ってしまうほどで、下りた後もついついあの感覚を思い出してしまうことが多く、別れの時は後ろ髪を引かれる思いだった。バイクに乗せられるのではなく、乗りこなしたいと思うならヴェルシスほど魅力的なモデルはあまり存在しない。ストリートをサーフィンするというメーカーコンセプトに偽り無し。まさに「感覚」で楽しめる新しいスポーツバイクと言えるだろう。

Kawasaki ヴェルシス

モデルイメージER-6シリーズに搭載される並列2気筒エンジンと鋼管フレームを組み合わせ、「Street Surfing」をコンセプトに開発された新感覚のスポーツバイク。名前の由来はラテン語で頂点を意味する「VERTEX」とそこに至る「SYSTEM」を組み合わせた造語だ。

 

DATA--

■エンジン=水冷4ストローク並列2気筒 649cc
■価格=¥871,500(税込 参考価格)
「ヴェルシス」の詳細情報を見る(バイクブロス)

 

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Bros.Editorial Team

Bros.Editorial Team

バイクブロス発行各誌の編集部から、乗りたがりクンたちが結集! 写真の4人を中心に、メンバーが自在に増殖するアメーバ的チームだ。みんなで乗って遊んで、今回はむーやん(右上)が担当。