基本設計を変えることなく
生まれ変わった新世代グッツィ
高い趣味性を持つモーターサイクルブランド「モト・グッツィ」。1921年に創業した同社はイタリアメーカーの中でも最古参のひとつとして位置づけられ、日本ではイタリア車の中でもとりわけツウ好みのブランドとして認知されているようだ。それもそのはず、1969年に登場した「V7」以降のモト・グッツィは、90度V型エンジンのクランク軸を進行方向と同じ方向に搭載し、その出力をシャフトで後輪に伝える独特のレイアウトを採用している。そのため、同じイタリア車で90度V型エンジンを採用するドゥカティとも異なる乗り味を持ち、それが、ドゥカティとはまた違ったファンを生み出してきた。今回紹介する「1200Sport」は、モト・グッツィが2007年初頭に日本に導入した最新モデルだ。モト・グッツィは空冷OHV2バルブV型2気筒エンジンやシャフトドライブという伝統を受け継ぎながら、2005年にエンジンやシャシーを一新させた次世代のモト・グッツィとして「Breva1100」を発売。このモデルをベースに、個性的なルックスを持った「Griso1100」、本格的なツアラーである「Norge1200」を誕生させる。1200Sportは、これらに積まれている「エボルツィオーネ」エンジンを1200ccにサイズアップし、Sportの名にふさわしいディテールを持たせた、走りのモデルである。
Breva1100をベースにして
スポーツに相応しい装備を持つ
1200Sportは前述したとおり、2005年に登場したBreva1100をベースにして排気量を拡大し、各部をリファインしたモデルだ。1200SportやBreva1100は、2005年に登場した新世代の「エボルツィオーネ」エンジンを搭載する。このBreva1100から始まる新世代モト・グッツィは、それまで代々受け継いできた空冷V型2気筒エンジンとシャフトドライブを、21世紀のモーターサイクルとしてあるべき姿に進化させたモデルだ。空冷OHV2バルブという40年前に誕生した基本設計を守りながら、2001年にヨーロッパで施行された世界で最も厳しい排出ガス基準「EURO3」に対応させている。また、それまで両持ちのスイングアームに、ドライブシャフトとファイナルギアケースを組み合わせていたリア周りを一新。片持ちで筒状のスイングアームにドライブシャフトとファイナルギアを格納し、その中で自由に動くことができるという駆動システム「CARC」を採用。これによってシャフトドライブ特有の挙動が抑えられている。
ベースモデルのBreva1100と1200Sportの外観上の大きな違いはビキニカウルの有無と、ハンドルがセパレートタイプからバータイプになっているという2点。わずかこのふたつの違いによって、ベーシックネイキッドであるBreva1100を、“Sport”の名にふさわしいスポーティな佇まいに変えてくれているのだ。もちろん、車体の各部もグレードアップされているのは言うまでもない。マフラーにはリプレイス然としたカーボンサイレンサーが奢られ、フロントフォークはインナーチューブにコーティングが施されたフルアジャスタブルタイプ。ブレーキディスクはブレーキング製の花弁タイプになっている。1151ccにスケールアップされているエンジンは、先に登場したグランドツアラーNorge1200と共通で、最大出力68KW/7250rpm、最大トルク96.2Nm/5500rpmと、拡大された排気量を生かしてBreva1100に比べて低い回転数で大きなパワーを発生するのが特徴だ。
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1151ccV型2気筒エンジン
モト・グッツィ伝統の空冷OHV2バルブV型2気筒エンジン。2005年に登場した新世代の「エボルツィオーネ」と呼ばれるユニットは、世界で最も厳しい排出ガス規制「ユーロ3」に対応する。 |
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質感の高いメーター
メーター周りはBreva1100と共通のデザインで、ホワイトの文字盤にメッキの縁取りがあしらわれる。左下のボードコンピューターには平均速度や最高速度、ラップタイムなども表示できる。 |
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独自の「CARC」システム
エボルツィオーネエンジンと同時に登場した「CARC」システム。筒状のスイングアーム内にドライブシャフトとでデファレンシャルギアを内包し、シャフトドライブ特有のトルクリアクションを抑える効果がある。 |
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個性的なビキニカウル
デザインはベースモデルBreva1100と共通だが、1200Sportとしてのアピアランスを放つのがこのビキニカウル。風防効果は少ないが、個性的なヘッドライトと合わせて1200Sportのアイデンティティを放つ。 |
トルクに乗って走れる力強さと
ストレスフリーなハイウェイラン
モト・グッツィといえば、8年ほど前に少しだけ乗った1100Sportの記憶が思い出される。当時のグッツィといえば遠いハンドルに高いシート、そして一度払うとまたがったままでは自分で出せないサイドスタンドと、小柄な僕にとってはとてもとっつきにくいバイクという印象しか残っていなかった。その上、「これでスポーツするの?」というくらいの、自分のレベルではワインディングを走ることが想像できないハンドリングだったような気がする。そんなイメージを持ったまま、最新の1200Sportに対面した。エルゴノミクスを考えてスムーズなラインを描くタンクやシート周りのデザインは、昔のようなとっつきにくいイメージはなく、またがると小柄な僕でも片足であれば安心して足が届く。目の前に広がるコクピットは現代のバイクらしく高度に電子化されていて、特にボードコンピューターには瞬間燃費や平均燃費、平均速度に最高速度、そして左手のスイッチで操作して記録できるラップタイムまで表示できる。これらに限らずすべてにおいて今風なつくりが、これまで僕の中にあったモト・グッツィへのとっつきにくさを払拭してくれた。
走り出してみても1200Sportはまったく新しいバイクになっていた。エボルツィオーネエンジンが生み出すトルクによって、クラッチミートに神経を使うことなく発進でき、タウンスピードでは高めのギアでトルクに乗って走ることができる。その上、1200Sportだけに奢られたサイレンサーが奏でるサウンドは野太くライダーを飽きさせない。下から上までトルクに載って走ることのできるフィーリングのおかげで、ワインディングでも安心してアクセルを開けて走ることができる。同じイタリアの90度V型2気筒でありながら、ドゥカティのそれとはまた違うエンジンフィールに、しっかりモト・グッツィにファンがいることを納得させられた。そして高速道路に上がるとさらにモト・グッツィの真骨頂を味わうことになる。というのも、以前取材させていただいたモトグッチリパラーレの志賀太一さんが、「モト・グッツィの魅力は高速道路を使った長距離ツーリング。長時間、高いアベレージスピードで走り続けられる性能を持っている」とおっしゃっていた。今回試乗で一番印象的だったのはまさにこのことで、高速道路をかなり飛ばしても、本当に受けるストレスが少ないのである。もちろん、ネイキッドであるから受ける風圧や風切音などはある。しかし、バイクから伝わってくる挙動というか、重力とでもいおうか、そんな必ずどこかでライダーが力を入れてしまうような要素が少なく、バイクがビシッと真っすぐ走っていってくれるのである。同じ縦にクランクを置くBMWが長距離ツーリングに強いと言われていて、僕自身それを疑わなかったが、モト・グッツィの“どこまでも行けそうな感”はBMWのそれを上回る感じだったのである。
イタリア車の中でももっと
個性が欲しいというアナタへ
1200Sportをはじめ現行ラインアップのモト・グッツィは、最新のテクノロジーによって国産からの乗り換えでも違和感なく乗れるほど洗練されている。昔からのグッツィ乗りの中には、今のグッツィには昔のようならしさがない、と嘆く方もおられるが、やはりこのエンジンと駆動系が生み出す独特のハンドリングと佇まいは十分個性的だ。イタリア車に乗ってみたいのだけど、ドゥカティは乗っている人が多くて、というライダーにとって現行のモト・グッツィは最適だといえる。その中でも1200Sportは、Breva1100のおとなしさに物足らないという向きにオススメのモデルだ。ビキニカウルと極端にワイドなバーハンドルが、かなりワイルドな印象を与えてくれる。そしてそんな中にもイタリアンな華が添えられているのが1200Sportだといえよう。
同じようなメカニズムでも
調理方法でこんなに違うバイクに
これだけとっつきやすいと書いておいて、ひとつだけ面食らったのがハンドルバーの広さ。ワイドで一文字に近いようなハンドルバーのため、小柄な僕がポジションを取ると、常に上半身がウルトラマンの飛行形態になってしまう。ただ、このバイクの狙ったところが、ドゥカティのモンスターやBMWのR1150Rロックスターのような、ストリートカフェ的な位置付けという説明を聞いて、そのポジションに納得できた。それにしてもOHV2バルブの空冷2気筒エンジンに縦置きクランク、シャフトドライブと、この文字だけを見ればBMWのOHVボクサーツインと変わらないのだが、その調理方法によってこうも違う料理が出来上がるのか。それほどBMWとは全然違った個性を見せてくれたのがモト・グッツィ1200Sport。ヒトとは違うバイクに乗りたいという、ライダーが常に持っているココロを満たしてくれるのがこのバイクなのかもしれない。
1200Sport
2005年に登場した新世代モト・グッツィの最新作。「エボルツィオーネ」エンジンを1151ccに拡大してパワーアップを図り、足回りやマフラーなどをグレードアップしたスポーツモデル。
DATA--
■エンジン=空冷4ストロークOHV2バルブ90℃V型2気筒 1151cc
■最高出力=68kw/7,250rpm ■最大トルク=96.2Nm/5,500rpm
■価格=¥1,890,000(税込)
■「1200Sport」の詳細情報を見る(バイクブロス)