モト・グッツィのもう一つの流れ
V35/50から始まるミドルクラス
今回紹介する「Breva750 EURO3」は、イタリアを代表するブランドのひとつ、モト・グッツィのミドルレンジモデルだ。モト・グッツィといえば縦置きV型2気筒エンジンがトレードマーク。現在のラインアップには2005年に設計が全面的に見直された新世代の1100ccユニット「V1100エヴォルツィオーネシリーズ」と、同じく1100ccながら一世代前のエンジンにエヴォルツィオーネ系のパーツを取り入れた「カリフォルニアシリーズ」、そして、750ccの「V750シリーズ」という3種類のエンジンが用意されている。今回取り上げたBreva750 EURO3はこのV750シリーズのエンジンを積む唯一のモデルなのである。
V750シリーズはそれまでのモト・グッツィに搭載されていたエンジンのレイアウトをいまだ継承しているのが特徴だ。2003年に電子制御、インジェクション化されたものの、クランクケースの前に発電機などが付いているためエンジン全長が長く、また、シャフト部とファイナルギアケースの間に可動部がないリジッドな両持ちスイングアームであることなど、V7のユニットと基本構成は変わらない。それだけに、古いモト・グッツィの味を残したエンジンということで、古参のグッツィ乗りからはV750シリーズの方こそグッツィらしさが残っていると評する声もあるという。ミドルレンジのモデルというと、すぐに“フルスペックモデルの廉価版”というイメージが持たれがちだが、こうしたエピソードを聞くに付け、前回1200Sportに乗ったときからとても興味を持っていたモデルだった。
デザインこそ兄貴分と似ているが
400cc並の軽量&コンパクトさ
Breva750 EURO3は兄貴分のBreva1100同様、21世紀を迎えてから誕生した新世代モト・グッツィ。タンクからシートにかけてのデザインは同じBrevaモデルということもあり兄貴分に似ている。カタログ写真や実車を遠めに見ると、同じ車体に排気量違いのエンジンを搭載しているように見えてしまう。しかし実のところBreva750はBreva1100とはまったく別モノで、各部をよく見るとまったく違うつくりがなされているのである。まず、車体はBreva750の方が圧倒的にコンパクト。全長、全幅、全高といった数値ではほとんど変わらないが、シート高は790mmと国産の400ccクラスとほとんど変わらない数値だ。さらに182kgという乾燥重量は、現在日本に入ってきているモト・グッツィの中で最軽量。この400cc並の車体に、V35/50以来大きく変わることない空冷V型2気筒ユニットを搭載している。もちろん、伝統のユニットとは言うものの、EUの排出ガス基準EURO3をクリアすべくインジェクション化することで、現代の走りに通用する力強さと環境性能を備えている。
各部を見ていくと、細かな面でBreva1100との違いを発見できる。フロントブレーキは左側のみのシングルディスク。リヤサスは両持ちのスイングアームを2本のショックユニットで支えるコンベンショナルなタイプを採用している。またマフラーは左右のシリンダーの排気をそれぞれサイレンサーに導く2-2構成の2本出し。このあたりの作りは、このBreva750が誕生する直前にあったアメリカンタイプの「Nevada Classic」がベースとなっているようだ。フレームもモノバックボーンのBreva1100に対して、Nevadaと同じダブルクレードルタイプとなっている。このようにBreva750は、兄貴分のBreva1100とはかなりアプローチが違う作りがなされたミドルサイズ・グッツィなのである。そのため、走りの面においても、Breva1100とは違う乗り味に期待が膨らんだ。
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744ccV型2気筒エンジン
シリンダーヘッドが斜めに突き出る空冷90°V型OHV2気筒エンジン。レイアウトから全面的に刷新されたV1100シリーズに対して、V750シリーズは発電機の位置など、V7以来のスタイルを守る。 |
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駆動はシャフトドライブ
駆動力はシャフトを通じてホイール右側のファイナルギアに伝えられる。V1100シリーズはファイナルギアケースとシャフトケースが稼動する「CARC」システムだがV750シリーズは固定された従来のタイプ。 |
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足つきのいいシート形状
シートは先端に行くほど絞られている。790mmというシート高と相まって足付き性は400cc並み。タンデム側は前後長こそ短いものの、平らで幅もあり、グラブバーのおかげで安心してタンデムできる。。 |
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ノスタルジックな二眼式メーター
コンベンショナルなデザインの二眼式メーター。ワーニングランプを囲むメッキパネルからは80年代のモト・グッツィの雰囲気が感じられる。ヨーロッパ車らしい中央の大きなハザードボタンは使いやすい。 |
街中を快適に駆け抜けられる
逞しいトルクを持つエンジン
Breva750にまたがってまず感じたのは、思っていた以上にコンパクトだったということ。思わず「エッ、400cc!?」と口から出てしまったくらい小さかったのである。何より好印象だったのが、790mmというシート高。小柄な僕でも両足のつま先を地面に付けることができる。そして、眼下のタンクはしっかり肩が落とされていて、国産の250ccから400ccネイキッドのようなボリューム感。以前乗ったV1100系の1200Sportが、たっぷりとしたタンクのボリューム感にちょっと不安なくらいの足付き性だったことを考えると、同じBrevaの兄弟とは思えないほどの違いだった。また、トップブリッジにクランプされるバーハンドルは、今どきのバイクにしては幅が狭く、その点でも小柄なライダーにムリなポジションを強いることはない。182kgの車重も、街中でパーキングロットから引き出したり、ちょっと歩道を押したりするのにも苦にならない重さだ。これなら、週末のツーリングだけでなく、街中でも気負うことなく乗れるだろう。
このキャラクターを生かして都内を走り回ってみた。まず感じたのは国産400ccネイキッドのボリュームながら、エンジンは750ccクラスのV型2気筒だということ。最高出力こそ50ps弱と4気筒の国産400ccネイキッドに劣るくらいではあるが、一方トルクは5kg-m超をわずか3600回転で発生する。街中では2000回転から3000回転あたりを使って、「ドリュリュリュ」と2本出しマフラーが奏でるサウンドを楽しみながら走るのが一番気持ちいい。というか、普通に走る分には、ほとんどこのあたりの低い回転数でまったくストレスなく走れてしまうのである。このトルク感はゆっくり走るようなシチュエーションではとても有効だった。たまたま首都高が渋滞していたのだが、幅の狭いハンドルとコンパクトな車体にたくましい低速トルクの恩恵をここで感じることができた。もちろん7000回転からのイエロー、8000回転からのレッドゾーンあたりまで引っ張れば、750ccクラスらしいエネルギッシュな加速感を味わえる。しかし、高速道路の巡航では、V1100シリーズのような大きなマスがビシッと飛んでいくような感覚はこのBreva750にはあまり感じられなかった。コンパクトなマスがライダーの意志に敏感に反応するようなキャラクターで、街中を小気味よく走り回るのにちょうどいい。こうしたどちらかというと実用的なキャラは、モト・グッツィのVツインモデルが最初に白バイとして登場したことからも納得ができた。
扱いやすくてかつてのグッツィを
求めるリターンライダーに最適
Breva750は、これからモト・グッツィというバイクに乗ってみたいというビギナーだけでなく、昔バイクに乗っていて、ようやく余裕もできたから久しぶりにバイクに乗ってみるか、という年配のリターンライダーにもオススメしたい。若い頃に比べて落ちている体力に大きなフルサイズの外車は持て余す、と敬遠しがちなリターンライダーにとって、Breva750の大きさ感、扱いやすさはピッタリ。また、エンジンや駆動系を全面刷新したV1100シリーズに、昔のモト・グッツィらしさを求めるとちょっと物足りなさを感じるという年齢層のライダーに、このBreva750のフィーリングはどことなく共感できるものがあるはずだ。
廉価版ではないキャラクター
フィーリングが合えば小さな巨人
僕の所有するバイクも750ccで、当時フルサイズの1000ccに対しては弟分的な位置付けだっただけに、今回のBreva750に対して同じく弟分という立場でとても興味があった。おおよそ、多くの人がミドルレンジのモデルというと、廉価版、ベーシックモデルと、フルサイズモデルに対して、どこか“足りなさ”をイメージしがち。確かにカタログスペックや装備の面では見劣りする部分もあるのは事実。しかしそれが気にならないくらい、実は兄貴分とは違ったキャラクターを持っていて、それが自分の感覚にマッチすれば、とても頼もしい相棒になるというのを、僕は自分のバイクで実感していた。Breva750は確かに、排気量やサイズこそV1100シリーズに対して小さくなってはいるが、その乗り味やキャラクターを正当に評価すれば単なる廉価版にとどまらない魅力にあふれたモデルだと言える。
Breva750
縦置き空冷V型2気筒エンジンを積むモト・グッツィのミドルレンジモデル。Nevadaシリーズの骨格を受け継ぎ、インジェクション化などでEURO3に対応したエンジンを搭載するベーシックスポーツモデル。
DATA--
■エンジン=空冷4ストロークOHV2バルブ90℃V型2気筒 744cc
■最高出力=35.5kw/6,800rpm ■最大トルク=54.7Nm/3,600rpm
■価格=¥1,260,000(税込)
■「Breva750」の詳細情報を見る(バイクブロス)