バージンバイク
キャラクター&歴史

オートバイの原点とも言うべき
不変の個性

1978年にデビューし、間もなく30周年。剥き出しの丸型ヘッドライト、何の変哲もないガソリンタンク、フラットなシート、サイドカバー、メッキフェンダー、オートバイの原点ともいうべき、オーソドックスなスタイルを貫き通すヤマハSR400。エンジンは399ccのSOHC2バルブの単気筒で27psを発揮する。セルスターターは装備せず、キックスターターのみでエンジンを始動させるのだ。時代に媚びない“オートバイ”の原点とも言うべき不変の個性は多くのライダーを魅了し続けているが、軽量・スリム・コンパクトという設計思想に基づきながら、実は常に進化し続けている。年々厳しくなる騒音・排ガス規制に適合させたことをはじめ、ブレーキフィールや始動性の良さ、イモビライザーを装備するなど、SRらしさを崩すことなく、さらなる熟成を続けているのだ。ビッグシングルならではのエンジンの鼓動感やキックスタートの儀式など、語り尽くせぬ魅力を持つSR。進化と継承を表裏一体しながら、時代に合わせたSRを作り続けるヤマハに敬服の意を表したい。

特徴

なぜだろう
SRに乗ると旅に出たくなる

車輌詳細右足のつま先を使って、何の飾り気もないキックレバーを引き出す。キックペダルを軽く踏み、重くなるところ(圧縮上死点)でペダルを確実に戻す。ハンドル左側のデコンプレバーを引き、ほんの少しペダルを踏み下ろすと、インジケーターが始動しやすいポイントを教えてくれる。キックスタートに不慣れな人なら、この方法を忠実に守れば簡単にエンジンは始動する。キャブレターのチョークレバーを引き、いよいよキックペダルを踏みおろす。ペダルは力任せに蹴るのではなく、下に押し付ける感覚が良い。いわゆる“ケッチン”にビビって、恐る恐る踏むのが一番危険だ。ステップに当たるまで思い切って踏み込めば、痛い目に遭うことはない。よく、ビッグシングルのキックスタートはベテランでなければ難しいという話を耳にするが、決してそんなことはない。初心者だろうが非力な女性だろうが、やり方を把握していればSRのエンジンは簡単に始動してくれる。事実、ボクの身の回りにもたくさんのビギナーたちが、問題なくSRに乗っている。

 

今回の試乗車も、いとも簡単にエンジンが目覚めた。少し暖気してからチョークレバーを戻せば、アイドリングは800rpmほどで安定する。股間の下で399ccの単気筒エンジンが小気味よく震える。ギアを入れアクセルを開けると、エンジンはさらに震え出す。強烈なパンチもないし、突き抜けていくような加速の伸びもない。だけどそれで良い、これこそがSRの魅力。マイルドな出力特性で扱いやすい。親しみやすいエンジンはさておき、いつだって感じるのはハンドリングが軽くてニュートラルだということ。ワインディングに入ればヒラヒラと車体が寝てくれ、スポーツライディングを楽しむことができる。オーソドックスなオートバイというイメージばかりが先行するSRだが、この身軽さも忘れてはならない。オートバイの原点という表現はルックスだけでなく、このハンドリングの軽快さにも当てはまっている。

 

もちろん、高速道路を飛ばして走るのはキツイ。細かい改良が何度となく施されてきたものの、基本構造は1978年に登場したオートバイ。現在のせわしない道路事情の中、先頭を切って走るのは馬鹿げている。追い越し車線には出ず、クルマの流れに乗ってゆったりとした気分で走ろう。そんな気持ちで走れば、どこまでも走り続けたくなる。カウルもなければエンジンも非力、長い時間乗ればオートバイならではの独特の疲労感で全身が包まれる。しかしなぜだろう、四輪車のような快適性を謳い長距離ツーリングを得意とするリッタースポーツツアラーのような感覚とは180度違うものの、SRに乗ると旅に出たくなる。リヤシートに必要最小限の荷物を縛り付け、オープンフェイスのヘルメットと革ジャンで、あてもなく走りたい。そんな旅には相棒なんていらない、SRだけで十分だ。

余計なもののない完成されたフォルム
ボクならこのシルエットを決して崩さない

セルスターターや前後ディスクブレーキはもちろんのこと、フューエルインジェクションやABSブレーキ、油圧クラッチが当たり前に装備されるこのご時世に、2バルブエンジン、前後スポーク、リヤドラムといった前時代的な内容のヤマハSR。1978年の登場以来、キャストホイール仕様や前後ドラムブレーキ仕様などがこれまで登場してきたが、現在の仕様は一巡して再び初期型と同じ仕様、フロント=ディスクブレーキにスポークホイール、伝統的なカラーリングといった内容だ。カタログを開いてスペックを見ると、エンジンは400クラスとしては非力と言える27ps。だが、果たして本当に非力なのか。それは机上でのお話で実際に乗ってみると、普通に市街地を走ったり、ちょっとしたツーリングに出掛けても困ることはない。ちなみにボクは36年前の旧車(K社の650)を所有し、日常的にツーリングを楽しんでいるが、それに比べれば力はあり常用速度域は上だ。ボクに言わせてみれば、SRは十分に速い。

 

そして、その魅力はなんと言ってもトラディショナルなスタイリングだ。空冷エンジンらしい美しく刻まれたフィンを持つシリンダーから伸びるマフラーは、シンプルでカッコイイの一言に尽きる。深い光沢を放つクロームメッキの前後フェンダーやスポークホイールは、見ていて飽きない。余計なもののない、タンク、シート、サイドカバーで構成されるこの完成されたフォルムは見事と言えよう。シンプルな車体構造がゆえにカスタムのベースとしても最適とされているが、このシルエットを崩してしまうのはもったいない。ボクなら、SRはノーマルで乗るに違いない。

ポイント

オーソドックスなエンジン

4ストロークエンジンの基本形ともいえる空冷SOHC2バルブ単気筒のシンプルな構成。ビッグシングルならではのダイナミックなレスポンスを実現。フレームパイプの一部をオイルタンクとしている。

spacer

ポイント

磨き甲斐のあるメッキホイール

前後ドラムブレーキの時代もあったが、現在はフロントに298mmのディスクブレーキを装備。確実な制動力とブレーキフィールを得ている。美しいホイールは18インチのスポーク仕様。

ポイント

真っ直ぐに伸びたマフラー

オーソドックスなエンジンと車体に相応しいシンプルなクロームメッキ仕上げのマフラー。真っ直ぐに伸びたフォルムが美しく、車体ぎりぎりまで近づけたことで、いっそうスリムな車体を演出している。

spacer

ポイント

伝統的なガソリンタンク

シンプルかつ美しいフューエルタンクにはヤマハ伝統の音叉マークが入る。トラディショナルなスタイルで、容量は12Lを確保。カラーはマルーン(新色)、ブラウン、ブラックの3色をラインナップする。

SR400

ライディング状況1978年のデビュー時と変わらぬ姿で佇むヤマハSR。軽量・スリム・コンパクトという設計思想に基づき常に進化する空冷ビッグシングルは、時代に媚びないオートバイの原点とも言うべき存在。不変の個性は多くのライダーを魅了し続け、ロングセラーモデルの代表格となっている。

DATA--

■エンジン=空冷4サイクル単気筒399cc
■最高出力=27ps/7,000rpm ■最大トルク=29Nm/6,500rpm
■価格=\486,150(税込)
「SR400」の詳細情報を見る(バイクブロス)

spacer

青木 タカオ

青木 タカオ

バイク雑誌編集部員を経て、現在はフリーライター/編集者として、あらゆる二輪雑誌に携わる。16歳で中型二輪免許を取得し、18歳で限定解除。高校生の頃から日本全国を駆け回り、アメリカやタイなど海外ツーリングの経験も。