70年代にスタートしたヤマハ
クルーザーの代表モデル
今回紹介するドラッグスタークラシック400(DSC4)を初めて見たのはヤマハの試乗会。中型のクラスを超えたボリューム感には正直面食らった。直前にドラッグスター250乗っていて、その後DSC4に乗り換えたときに、そのボリューム感から最初は同じドラッグスターシリーズの1100ccと勘違いしたほど。「ドラッグスター」を始めとした、いわゆる“アメリカン”をヤマハでは「クルーザー」と呼んでいる。ヤマハのクルーザーシリーズの歴史は長く、30年近くさかのぼる。そのルーツは1978年に発売した「XS650スペシャル」だ。他社に先駆けて、日本のバイク市場に“アメリカン”というカテゴリーを創出。その後、XS750スペシャルをはじめ、シングル、並列2気筒、並列3気筒、Vツインなど、続々とバリエーションが誕生することになる。そして、国内では1984年に「ビラーゴ」として本格的にシリーズ化をスタート。日本人が持つアメリカンというイメージを、より具体的にしていった。1996年にヤマハのクルーザーシリーズの第3世代として「ドラッグスター400(DS4)」が登場する。ドラッグレースを走るマシンのロー&ロングなイメージを持ち込み、そのスタイルと400ccというクラスを超えたボリュームが人気を呼び、発売から4年間に渡って小型二輪市場で首位を獲得する。DSC4はそんなDS4の派生モデルとして1998年に登場。ファットなフロントタイヤに深い鉄製フェンダー、サドルタイプのシートやフットボードなど、DS4にクラシック・アメリカンテイストを塗したモデルだ。
中型を超えた威風堂々の佇まい
クラス唯一の空冷Vツインを搭載
ロー&ロングのコンセプトどおり、全長2450mm、ホイールベース1625mmという体躯は、1クラス上の堂々とした存在感を示す。このディメンションはベースモデルとなったDS4とほぼ共通だが、それをさらに大きく見せているのが“クラシック”なデザイン。130/90MCというフロントタイヤや、重厚感のあるサドルシートなど、旧きよき時代のクラシック・アメリカンバイクを思わせる佇まいを見せる。さらに、こうした大きさを間延びさせないのが、随所に散りばめられたクロームメッキパーツの数々。外装以外はほとんどメッキが施されていて、これらのパーツの造形がそれぞれきちんとデザインされており、映りこむ風景が豊かな表情を見せてくれる。エンジンはこのクラス唯一の空冷70度Vツイン。アメリカンとはいえ水冷エンジンが趨勢を占める中、あえて空冷を選ぶあたりは、いまだに「SR」や「XJR400R」など、小排気量車でもしっかり趣味性を求めるヤマハらしいこだわりだといえよう。この空冷Vツインは、フラットなトルク特性によって低い回転をキープしながらでも力強く走ることができる。また、駆動系にチェーンではなくシャフトドライブを採用しているのも、ヤマハならではのこだわり。メンテナンスフリーというメリットと、駆動系をすっきり見せられるという点で、こうしたクルーザーにはぴったりだ。そのためもあってか、左側面のビューはきれいな三角形を描くフレーム(厳密にはスイングアームだが)がくっきりと浮かび上がり、一見リジッドと思わせる取り回しがクラシック・アメリカンに求められるイメージをとてもうまく再現している。
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上品な質感が美しいタンクオンメーター
メーター類は燃料タンクの上にレイアウトされる。クロームメッキと艶やかな曲線が美しいメーターケースや、オフホワイトの文字盤など、ミドルクラスとは思えない上品な質感を見せる。 |
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空冷SOHC70度Vツインエンジン
ビッグバイクのユニットを思わせるボリュームのVツインエンジン。スロットルポジションセンサー付きのキャブレターによる制御により、力強い中低速とフラットなトルク特性を持っている。 |
手足が遠いポジションに面食らうも
慣れれば走りやすいハンドリング
冒頭にも書いたとおり、DSC4に初めてまたがったときの正直な感想は「これってセンヒャク?」というものだった。シートにまたがると眼下にガソリンタンクが広がり、その前方にはたくましいステアリングヘッドがダムのように立ちふさがる。そしてそのはるか向こうにヘッドライトがあるという感じなのだ。このビッグバイク並みの車体サイズのDSC4は、小柄な僕にはそのサイズをもてあますほど。サドルシートに深く腰掛けると、ハンドルに伸ばす腕はしっかり伸ばさないといけないし、「これってフォワードコントロール?」と思ってしまうほど、フットボードは前に位置している。165cmくらいの身長があればちょうどいいポジションにはなるだろう。そのくらい余裕のあるポジションなのだ。
エンジンはどの回転数でもアクセルを開けると逞しい加速を見せてくれる。タコメーターがないせいかもしれないが、どのギアに入っているかをあまり意識させない。サウンドはマフラーがしっかり消音効果を発揮しているせいか、ビッグツインのような“ドロッドロッ”という排気音は聞こえてこない。どちらかというと、エンジンのメカノイズのほうが大きいくらい。しかし、今のご時世、あまり騒々しく走っても大人気ないし、本来のクルーザーという趣旨からすると、コッチのほうが楽に長距離を走ることができるはずだ。日本のためのクルーザーというコンセプトどおり、そのハンドリングがアメリカンというイメージからするとシャンとしていたのは意外だった。アメリカンというとハンドリングがおおらかなイメージがあるが、このDSC4はスポーツネイキッドに遜色ない、きびきびとした走りも可能だ。特に交差点の左折やUターンのような極低速で小回りするシチュエーションでは、アメリカンバイクだとある程度まで傾けると急にカタンとハンドルが切れていくことがある。それが慣れていないと結構おっかないものなのだ。その点DSC4では最後までハンドルの切れ方が自然なのである。こうしたところに街中でも使いやすく味付けした、日本の道を走るクルーザーという明快なコンセプトが感じられた。
おおらかな走りが楽しめるDSC4
小柄な人でも乗りこなすことは可能
オートバイの楽しみ方はいろいろあるが、DSC4のようなクルーザーはおおらかに構えて、ゆったり流れる風景を楽しむ乗り物だと思う。そんなときに、エンジンが走りを急かしたり、運転に細かな神経を使わせたりするようでは楽しみも半減してしまう。400ccクラスのバイクだと、どうしてもエンジンを回して走らないといけないような強迫観念に迫られるもの。しかしDSC4はそんなことをほとんど考えさせない、どっしりとした安心感とゆとりを与えてくれる性格を持っている。そのため、ゆったりとクルージングを楽しみたいという向きに最適なバイクだといえるだろう。また、確かにこの見た目の大きさに小柄なライダーだと臆するかもしれない。しかし、実際にまたがってみると決してムリではないポジションだとわかるはずだ。
本家本元とは違う本物感を備えた
日本を走るためのクルーザー
大型二輪免許が教習所で取れるようになり、今はアメリカンに乗りたいと思うライダーのほとんどが簡単に本家のハーレーダビッドソンに手が届く。あえて、わざわざ和製アメリカンを求める必要もないという見方もあるかもしれない。しかし、現在の和製アメリカンは、昔のように本家のコピーを追求しているのとは明らかに違う。そもそも、現在、DSC4のようなモデルのカテゴリーを、メーカー的には“アメリカン”とは呼ばないらしい。アメリカ本国で使われている“クルーザー”というのである。そういう意味で、日本をゆったりと旅したい、クルージングしたい、という向きには、むしろ日本の道路事情や使い勝手にマッチした日本製クルーザーのほうがちょうどいいのかもしれない。DSC4は、アメリカンテイストのバイクとして捉えることもできるが、このクラスにほとんどなくなってしまった、ツーリングモデルのもうひとつの形として、周囲の交通の流れを悠々と泳ぐようなツーリングを快適にしてくれるはずだ。
ドラッグスタークラシック400
ヤマハクルーザーの第3世代として1998年に登場した「ドラッグスター」の派生モデル。ファットなフロントタイヤやディープフェンダー、サドル風シートなど、クラシック・アメリカンのテイストあふれる作りが魅力。
DATA--
■エンジン=空冷4ストロークV型2気筒 399cc
■最高出力=32ps/7,500rpm ■最大トルク=32Nm/6,000rpm
■価格=¥735,000(税込)
■「ドラッグスタークラシック400」の詳細情報を見る(バイクブロス)