バージンバイク
キャラクター&歴史

満を持してデビューした
国内専用ストリートスポーツ

ハイパワーな輸出向けリッタースポーツといえば、スポーツ志向のライダーにとって憧れの対象だ。その最大の魅力は国内の自主規制枠の中では出せなかった強烈なパワーで、何かにつけては「リッターバイクなら海外仕様の逆輸入車が良い」と言われ続けてきた。しかし、これは本当に正しいのだろうか。例えば、ヨーロッパと日本では交通事情がまるで違うのに、スペック表の数字だけでバイクの良し悪しを判断してしまって良いとは思えない。そんな疑問への回答となるバイクこそ、ヤマハが満を持して発売したリッタースポーツバイク「FZ1フェイザー」だ。

 

2006年にヨーロッパで発売されたFZ1フェイザーは、スーパースポーツであるYZF-R1のエンジンをリファインして搭載した人気のストリートモデル。しかし、ストリート向けとはいえ150馬力のパワーを誇っている。海外仕様のハイパワーは魅力ではあるが、周りの環境によってはバイクの面白さを削いでしまう諸刃の剣だ。実際、筆者自身も海外仕様のFZ1フェイザーに一度乗ったことはあるものの、高速道路でも持て余してしまうほどだった。今回国内仕様として発売されたFZ1フェイザーは、日本国内の交通事情に合わせてパワーユニットを徹底的に調整することにより、日本専用とも言えるバイクに仕上げられているとのこと。カタログスペックに見えない性能を追求したと開発者が語るこのニューモデルを、今回一般道に設定が近いクローズドコースにて試乗する機会に恵まれた。「国内仕様」というものに対してヤマハがどのような回答を出したのか、早速体験してみようと思う。

特徴

高性能エンジンだけではない
使い勝手のよさが魅力的

車輌詳細FZ1フェイザー最大の特徴、それは2004年式YZF-R1をベースとしたエンジンだ。国内仕様では海外仕様にくらべて最高出力が抑えられているが、これはトップエンドのパワーではなく低中速域での扱いやすさを重視し、エンジン出力特性を一から作り直したためだ。ヨーロッパでは一気にアクセルを開けて高速域へと移行するため大パワーが重視されるが、道幅も狭く最高速の制限が厳しい日本では、一般道もより意識した中低速でのレスポンスやコントロール性能が重要となる。FZ1フェイザーではライダーの微妙なアクセルワークに対応させるため、圧縮比やフューエルインジェクションなどを最適化し、9000回転で最大出力が引き出せるようにセッティングしている。そのため、12500回転でピークとなるYZF-R1にくらべて、格段に扱いやすい特性となっているのだ。

 

そんな高性能エンジンを搭載する車体は、昨今のスーパースポーツに比べると一回り大きいサイズになっている。スポーツ性能を重視したためシート高は815mmとやや高めな設定になっているが、シート形状のおかげで意外と足つきは悪くない。このシートは形状とクッション性能も秀逸で、無駄に沈み込まず体をしっかりと支えてくれる感触が心地よい。ライディングポジションは前傾がきつくなく、いたってニュートラルな雰囲気。ハンドル幅も見た目ほど広く感じられず、身長174cmの筆者だとどこにも負担のかからない姿勢で乗車ができた。また、ツーリングに便利な荷掛けフックや、標準装備のタンデムグリップなど、走りだけでなく日常での使いやすさにも配慮されているのも特徴だ。感心したのは、メーターの輝度調整機能。見やすいメーターは数あれど、明るさの加減をライダーにあわせて調整できるものは少ない。どうしてもエンジンを中心としたハイパフォーマンスな部分に目が行きがちだが、何気ない部分まで作りこまれていることも、FZ1フェイザーの大きな魅力だろう。

 

ポイント

多機能で視認性良好
デジタル+アナログメーター

メーターは速度表示がデジタル、回転計がアナログになる。トリップメーター、時計などツーリングに役立つ機能を備えており、グローブをしたままでも扱いやすい。また、バックライト輝度を自由に調整できるため、視認性は良好だ。

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ポイント

アップライトなポジションで
コントロールしやすく疲れにくい

ストレートタイプのバーハンドルは、腰に負担のかかりにくいアップライトなポジション。ホールド性の良いシートとの位置関係も良く、体が動かしやすくなっている。ハンドル幅は一見広そうだが、またがってみると適度な幅に感じられた。

ポイント

デザインの中に織り込まれた
日常性の高さも魅力的

FZ1フェイザーの大きな魅力の一つとして、さりげなく織り込まれた日常性の高さがある。例えば、タンデムステップホルダーがフックをかけやすい形状になっているなど、細かい部分での使いやすさは他のスポーツバイクにはないものだ。

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ポイント

国内専用にチューニングされた
YZF-R1ベースのエンジン

2004年仕様のYZF-R1用エンジンをベースに、国内向けに調整された専用エンジンを搭載。リッタースポーツのパンチを残しながらも扱いやすさが際立つ設定になっており、雨天時でも安心してスロットルを開ることができる。

試乗インプレッション

安心して楽しめるハイパフォーマンス
乗り手を選ばないリッタースポーツ

車輌詳細さて、実際の走行インプレッションだが、試乗当日はあいにくの大雨。整備されたクローズドコースとはいえ、決して理想的な路面状況ではない。以前に持て余した経験があるだけに慎重にアクセルを開けていったが、そんな心配は無用のものだとすぐに気が付いた。とにかく「怖く無い」のだ。元が高性能エンジンだけに、思い切りスロットルをひねれば猛然としたダッシュを見せるが、程よい硬さのサスペンションと車体は乱れること無くしっとりと落ち着いており、ライダーを不安にさせることがない。かといって曲がらないわけではなく、セオリーどおりにブレーキングを行ってコーナリングを始めれば、するすると思った方向へ曲がっていってくれる。アクセルの追従性が非常に高いため、力の出方がとても分かりやすく、車体の動きをコントロールしやすいのだ。これは海外仕様にはなかった特性で、日常での使用を考えれば大きな利点。

 

車輌詳細 また、ガソリンやオイルなどが入った装備状態で225kgという車重も、走り出してしまえば負担に感じることもなく、むしろ落ち着きのある走りに好影響を与えている雰囲気さえある。同日にYZF-R1などスーパースポーツモデルも試乗したが、乗りやすさや安心感ではFZ1フェイザーに一票を投じたい。スポーツバイクといえばどうしてもエキスパート向けのイメージがあるが、このバイクにはそんな気負いは必要ないだろう。バイクの動きがわかりやすく、ライダーの意思に素直に追従するFZ1フェイザーは、リッタースポーツの中でも乗り手を選ばない1台。雨の中でも安心してブレーキングやコーナリングが楽しめる、と言えば伝わるだろうか。エキサイティングなパフォーマンスを持ちながら、それを誰にでも楽しめるカタチで提供する国内仕様のFZ1は、稀有なスポーツバイクと言えるだろう。

こんな方にオススメ

はじめてのスポーツバイクにも最適
万人に楽しんで欲しい高性能な1台

FZ1フェイザーは、スーパースポーツモデルに見られる気難しさの無い1台だ。初めてのスポーツバイクに最適なだけでなく、これまで走りを重視したバイクが苦手だった方にも乗って欲しいバイクと言える。日本国内の道路事情にあわせたセッティングは見事なもので、気負うことなく楽しめるモデルだ。スペック上の数値には現れない性能の良さや扱いやすさは、万人にすすめられるレベルに達している。シート高や車体サイズに問題がなければ、これほど便利に使えるバイクも少ない。毎日の足からツーリング、スポーツ走行の相棒としても十分に活躍してくれるだろう。

総合評価

国内仕様の意味を再定義する
エポックメイキングな存在

これまで、逆輸入ハイパワーの優位性について疑問に感じていた。確かに高性能・ハイパワーはライダーの憧れだ。しかし、実際の使用においてはそれが足かせになることもあるのだ。FZ1フェイザーはそんな疑問に対して、日本国内にあわせたリッタースポーツというものを見せてくれた。有り余るほどの性能をドライバビリティに振り分けることで、安心して楽しめるスポーツバイクとなったFZ1フェイザーは、これからのスポーツバイクの一つの指針となるはずだ。実は最近、筆者の友人が大型免許を取り、ビッグスクーターから国内仕様のFZ1フェイザーに乗り換えた。その理由を改めて確かめたところ、やはり乗りやすくて楽しいからだという。バイクの楽しさは、スペックだけが全てではない。「乗りやすい」という目に見えないハイパフォーマンスは、一度体験してみる価値があるのではないだろうか。

FZ-1フェイザー

モデルイメージスーパースポーツであるYZF-R1のパワーユニットを搭載したスポーツモデル。国内発売にあたり、日本の道路環境にあわせた仕様へとリファインされている。

DATA--

■エンジン=水冷4ストロークDOHC5バルブ並列4気筒 998cc
■最高出力=69Kw(94PS)/9,000rpm
■最大トルク=80Nm(8.2kgf・m)/7,500rpm
■価格=¥1,050,000(税込)
「FZ-1フェイザー」の詳細情報を見る(バイクブロス)

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Bros.Editorial Team

Bros.Editorial Team

バイクブロス発行各誌の編集部から、乗りたがりクンたちが結集! 写真の4人を中心に、メンバーが自在に増殖するアメーバ的チームだ。みんなで乗って遊んで、今回はむーやん(右上)が担当。