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現代のドカの基本形式は 90度L型空冷2気筒エンジンを美しい鋼管トラスフレームに積む形式を頑なに守るドゥカティ。今でこそアップライトな「モンスター」やデュアルパーパスの「ムルティストラーダ」などさまざまなバリエーションがあるが、すべて基本はこのエンジンとフレームの組み合わせだ。そんなドゥカティの基本形式のルーツが、’80年代初頭に登場した「750F1パンタ」とそのシリーズ。’70年代のレースシーンを席巻した、ベベル(傘)ギアを使ったLツインエンジンから決別し、クルマと同じコクドベルトを使った新世代ツインを積んだTT-F2レーサーは、再びレースシーンで大活躍する。そんなワークスレーサーの雰囲気を色濃く残し、“スーパースポーツ=ドゥカティ”のイメージを確固たるものにした’80年代のドゥカティ。その魅力を、旧いドゥカティのカスタムコンプリートを手がけるTIOの代表、川瀬英幹さんに伺った。 黄色い750Sに黒ツナギ、コンティマフラー
しかし当時、ドゥカティはとても高価で、実際に自分で買って乗るのには何年か時間が必要でした。そして最初に買ったのは「900マイクヘイルウッドレプリカ」。しかし今から考えるとひどいバイクで、キャブレターは外れるわ、オイルは吹くわで大変な思いをしましたね。でも、そんなことをよく知らないし、とにかくうれしさが先にそれでどこにでも行きましたよ。メンテも自分でやりました。当時はバイクを買ったお店でないと整備してくれないような時代で、私のドカは個人売買だったため自分でやるしかなかったんです。でも私自身まだドカに対する知識も乏しく、バラしては壊し、壊しては直しということを繰り返しました。そうして、ドゥカティのメインテナンスを覚えていくうちに今につながる“仕事”になっていきました。
2台目のドゥカティは、1985年に発表された「750F1 パンタ」でした。これは発表されてすぐに購入しました。デザインが「TT2レーシングパンタ」そのままでカッコよかったんですよね。ところが実際に乗ってみると、とんでもないシロモノでしたね(笑)。16インチのフロントタイヤのハンドリングはとてもおっかなかったんです。それでさらに「750F1モンジュイ」を手に入れ、エンジンをチューニングしてサーキットを走らせるようになりました。その頃はツインのレースが一番盛んだった頃で、モディファイドツインクラスは予選の参加台数が120台を超え、そのうち決勝に残れるのがわずか30台という時代。だから、いつもどうやったら速くなるかを一生懸命考えていましたね。 ドゥカティの中でパンタ系は
それはドゥカティの中でも同じなんですね。だからといってベベル系まで遡ると、あれはキックで心情的には好きなのですが、体力が必要で極少数のライダー向けなんです。非日常でほんのちょっとしか乗れません。そこで、ちょうどいいと思うのがパンタ系なんです。小さくて、車重で言えば乾燥重量で150kgくらい。ホイールベースが1400mmくらいで、キャスターが25度くらい。エンジンのパワーはチューニングすれば80馬力くらいでしょうか。つまり4ストロークの「TZ」だと考えればいいと思います。ただパンタはやはり“ドゥカティ”です。好きな人はすごく好き、でも、これはダメだ、という人には全然ダメ。カップラーメンのように誰が食べても美味しいというのではなくて、もっと何か味の濃い食べ物だと思います。
旧車の空冷エンジンは、現代の水冷エンジンとも違います。水冷エンジンは、どれも“味”が似通っているような気がします。燃料が入ってちゃんと燃えて、排気バルブが開いて出てくる、という一連のロジックな作業がちゃんとできているから、みんな同じようなフィーリングになってしまうのかもしれません。一方で空冷は、ハーレーにしろドカにしろ、その辺がけっこうファジー。排気バルブが開いてもその先のポートでまだ燃えている。生ガスもバンバン出ている、といった割り切れないカオス(混沌)のような状態になっています(笑)。アクセルを開けたときの感じとか、アクセルを戻してマフラーから音を吸うような心地よさは、こうした不完全さから来るのではないかと思うんですね。本当はそれではいけないのだろうけれど、フィーリングは人によって感じ方が違うわけだから、そういった割り切れないものが訴えてくるフィーリングが、空冷ドゥカティの魅力になっているような気がします。 川瀬さんに訊く!
これらパンタに対して、モンジュイ、サンタモニカ、ラグナセカは、普通に乗りたいというのであればやめた方がいいかもしれません。いずれもレース用のカムシャフトを使っていて、キャブレターの口径も大きくアイドリングしません。もちろんお金をかけてヘッドをオーバーホールしてカムシャフトを変えれば、ちゃんとアイドリングして普通に走るバイクになります。しかし、もちろん高回転の伸びのよさというのはなくなります。
ドゥカティに限らず、旧いバイクを買うのはそれほど難しいことではありません。しかし問題になってくるのは、その後のランニングコストやパーツ供給の問題です。TIOに関して言えば、パンタ系に関して言えば日本で一番ストックがあると思っています。もちろん一部ないものも何点かありますが、それは純正パーツではなく社外品流用して対応できます。また、ウインカーレンズやインジケーターといったものは一番やっかいなもので、そこまで純正にこだわると難しいのですが、そうでなければほぼ100%大丈夫だといってもいいでしょう。ただ、旧いバイクですからキャブレターは年中調子を崩します。だから辛抱して付き合わないと乗り方をなかなか覚えられません。人間の方からバイクに合わせる必要がある部分が、今のバイクより多いのです。燃料コックを開けてチョーク引いて、エンジンがかかったらちょっとチョークを戻して少し暖気して、アイドリングするようになったらゆっくりシフトペダルを踏み込んで走り出す。その行為が楽しめる、それを容認できる人でないとなかなか付き合っていけないと思います。
あと、どうしてもパーツの品質や技術水準が今のもの比べると劣ります。オリジナルがいいという人にとってはパーツもオリジナルが理想だと思いますが、例えばレギュレーターにしてもイタリア製は燃えてしまう。だから日本製を使って欲しい。クラッチマスターも昔のものはさすがに重いし動きが悪い。できれば現代のブレンボを使って欲しい。だからTIOの中古車は完全オリジナルにこだわっていません。ダメなところは外してしまって現代のものに付け替えてしまいます。そういう安全に関わるようなところはオリジナルにこだわるよりも安全を優先しましょう、操作性を優先しましょう、フィーリングを優先しましょうという、という考え方でやっています。 愛車DATA --
世界TT-F2選手権でチャンピオンを獲得したワークスパンタのレプリカとして、1985年に登場した750F1 パンタ。トラス構造の鋼管フレームにコクドベルト駆動のL型ツインエンジンという組み合わせは、ここから始まり現在のドゥカティ各車の基本となっている。川瀬さんのパンタは、当時のワークスレーサーが採用していたロッカーラパイドのリヤサスを中心に、現代の倒立フォーク+ブレーキシステムや前後17インチホイール、さらにはFRPタンクに換装するなどして“現代のF1パンタ”に仕上げられている。 |
TIO(ティオ) 750Sに惚れ込んでドゥカティにハマった川瀬さんが約25年前に開業。新車販売のほかパンタ系、F1系を中心に、綺麗にレストアされた旧いドカの販売にも力を入れている。また「ロッカーラパイド」、「スーパーツイン」という、川瀬さんが長年蓄積してきたノウハウを注ぎ込んだカスタムコンプリート車も製作している。
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